企画

□想い合う
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『怒られた……』
「な。いい年した大人二人がな」

いま、この車両には二人だけ
駆け込み乗車したのを、車掌さんに怒られてしまった
それが可笑しくて、車掌さんがこの車両から出ていった途端に二人で大笑いした

『パウリーさんのせいですよ』
「お?俺のせいにすんのか?」
『当たり前です!パウリーさんが引っ張るから!』
「引っ張らなかったら乗り遅れてただろうが」
『そもそもパウリーさんがギリギリに来るから!何してたんですか?』

そう言えば急に、「あー…」とか言い、言葉を濁すパウリーさん

『別に、いいですけど』
と言えば、「そうか…」と言ったきり、沈黙が流れる
がたん、ごとん、と海列車の音だけが響く
沈黙が気にならなくて、
むしろ、すごく心地良い






「あの、よ…」
暫くの沈黙のあと、パウリーさんが口
を開く
外はもう暗くなりはじめていて、車両の電気が点いた
『なんですか?』
真剣な顔に、目が逸らせない




「その、俺とひなが初めて会ってから、どんくらいだ?2週間?3週間?」
『んー、だいたいそのくらいですね』
改めて考えてみると、案外短いなぁ
たった2、3週間で、デートとかしちゃってるなんて
なんだか夢みたいだ

「そうか…まだ、そんなもんか」
少し目を伏せたパウリーさん
表情が読めない
「そんな、出会って2、3週間でなに言ってんだ?って思うかも知れねぇけどよ、」
そう言葉を区切り、パウリーさんは顔を伏せて顔を隠す

(なに?なにを言おうとしてるんだろう…?)
と次の言葉を待つ






「俺は、…ひな、お前の事が好きだ」




『……………え?』






え?い、いま、なんて……
好き、とか、そんな、聞き間違い?


「ちゃんと聞いてんのか?人が告白してんだぞ」
そう言って指の間から覗いてきた目は、間違いなくわたしに向けられていて
少し覗いた赤い頬からも、わたしに向けたものだと確信づけてきて
わたしの顔もだんだんと赤くなっていった





『うそ…』
やっと出てきた言葉はたったそれだけ
だって、だって、




「こんなときに嘘なんて言うか」
『そ、れは、そうなんですけど…!』




言い終わる前に交わされる口づけ
少々強引ではあったけど、抵抗なんてするはずがない




「好きだ」




そう、目をみて言われてしまえば現実なんだと再確認する




『わ、わたしも、大好きです』
やっとの思いで、その言葉を絞り出した
「はぁ……」
と、パウリーさんはなぜかため息を吐いた






「無駄になるかと思ったぜ……」
そう言いながら出したのは、小さい箱
ぱか、と開ければ、キラキラ光る可愛らしいネックレスで



『えっ、と、これは…』
もしかして、と思いながらも聞いてみれば、
「察しろ!」
と返される
と、言うことは…
『わたしに、ですか?』
そう言えば、
「返品は受け付けねーからな!」
と言うパウリーさん




なにこの人、可愛い
『ありがとうございます!』
と言って受け取ったそれは、
決して高価なものではなかったけど、
わたしの宝物のひとつになった




想い合う




(えへへ、これ、すごく可愛いですね!パウリーさん!)
(可愛いのはお前だ…!)




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