長編

□絶刀・鉋
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『おはよう、蝙蝠』


まだ日の上らない明け方
声の主、真庭朱雀ともう一人、真庭蝙蝠は真庭の里の門付近にいました。



「あれ、子猫ちゃんじゃねーの。おはようさん」
『蝙蝠、これから奇策士さんのところに行くんでしょ?私も連れて行って』



そう告げる朱雀といつものようにきゃはきゃはと甲高い声で笑う蝙蝠。
「いいぜ、」と簡単に承諾した蝙蝠ですが、これから向かうのは紛れもなく先日裏切ったばかりである奇策士とがめの元であるのです。
不承島―――大乱の英雄が島流しにされている島、それが場所的な目的地であります。



『不承島?』
「大乱の英雄、鑢六枝が島流しにされた島だとさ。奇策士の子猫ちゃんてば今度は虚刀流を頼るつもりみたいだな」
『虚刀流?』
「なんでも、刀を使わない剣士なんだとさ。きゃはきゃは、ばかげた剣術もあったもんだよなーぁ。そうは思わねぇか、朱雀」
『刀を使わないのに剣術なの?』
「そうみたいだぜ、俺もよくは知らねぇけどな」



そういって二人は歩き出したのです。
不承島――――否、丹後の深奏海岸と。



『あれ、不承島にいくんじゃないの?』
「きゃはきゃは!おれにだって策というものがあるんだよ、朱雀ちゃん!」


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