□第1章
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〜美翔side〜
オフィスに帰ってきてキッチンへ。
今日のメニューはリクエストのあったハンバーグ。
この前蘭子の家でも出たのに
「美翔さんのが食べたい」と言うので作ることにした。
福良さんのために野菜はみじん切りにしてすりつぶしてペースト状にすればいいし、ナツメグ以外にも少しだけハーブを加えて野菜の匂いを消せばいいや。
せっかくだからご飯はお鍋で炊いてみよう。
あとはサラダと副菜(福良さん以外分)、お味噌汁でも作るか。
なんて計画を練っていると


「あのー…皆様?」
「ん?」
「何?」
「そこで何を?」
「何って……見学?」


いつの間にか後ろには人集りができている。
まずはお米をセッティングする。
軽く一升は必要だろう。
次に野菜を刻んですりおろす。
あからさまに嫌な顔をする福良さん。
そこにハーブを入れて野菜の香りを消していく。
「美翔さん、何か手伝う?」
「拓司、ありがとう。じゃあ、はい。手に油つけてたね作り手伝って。」
「オッケー。」
拓司と二人で料理。
一体何年ぶりだろうか。
そんな事を考えていると拓哉と拓朗が隣にいた。
「久しぶりだね。」
「なんだか懐かしいです。」
静寂に包まれる。
なんだかこの空間だけ昔に戻ったようなそんな不思議な気がしたのは私だけじゃないだろう。


3人とも誰もいそいそとこんな形で戻ってきた私を責める事などなかった。
私たちは昔のままだったのだ。
それなのに私は逃げてしまった。
だが、それを気にするのは無粋だとも思う。
だってこの子達にとってそれは全く関係のない事のようなのだから。
私の帰る場所はきちんと今でもここにあったんだ。


「よしっ!それじゃあ、焼こうか。」
ずるいずるいと騒がれて隣は変わってこうちゃんと山本くん、福良さん。
「美翔さんが料理できるってなんだか意外ですね。」
「そうかしら?」
「なんか美翔さんってプライベートが全くわからない魔女みたいな人って感じで。」
「………魔女ね。」
つい胸に引っかかってしまう。
魔女の家系に生まれた私。
その運命からは逃れられないのかもしれない。
「美翔さん、どうしました?」
「いや、なんでもない。それにしても世間のイメージってどうなってるのかしら…」
「せやな(笑)」
「そうそう(笑)」
「俺は素顔の美翔さんが好き!」
「おい、惚気が混じってるぞ!」
「「「(笑)」」」
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