□第1章
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〜こうちゃんside〜
桜もそろそろ舞い散る春先。
オフィスにいるのは伊沢さんと山本さんと俺だけ。
「もしもし。えっ!今からですか?」
伊沢さんの声だ。
「はい。大丈夫ですよ。はい。はい。待ってます!こうちゃん、山本。俺ちょっと買い物行ってくるから!お客さん来たら通してといて!」
嵐のように伊沢さんは飛び出していった。


数分後チャイムが鳴る。
「はーい。どちら様ですか。」
「こんにちは。花園です。伊沢くんいるかしら?」
「すいません。今出かけてまして。」
「あら、そうなの。どうしましょう…」
「少々お待ちください。」


「ねえ山本さん。」
「どうしたの、こうちゃん?」
「なんか花園さんって人が来てるんだけど。」
「誰?」
「えっ、山本さんも知らないの?」
「うん。もしかしてファンの子とかじゃない?」
「あ〜、そういうことですかね。」


「すいません。アポってとってますか?」
「え〜?だってアポも何もさっき電話したらいつでもいいって。」
そういえばさっき伊沢さんが電話していたことを思い出す。
「山本さん、なんかアポはとってるみたいだし通しちゃってもいいですよね。」
「まぁ、それならいいんじゃない。」
「はーい。今あけますね。」


「おじゃましまーす。ごめんね、もー拓司ったら…」
そう言って入ってきた女性なんだけど…
とにかくデカい。
モデルでもやってるのではないかと思ってしまうほどすらりと長い手足にサングラスをかけた小さな顔。
その身長は恐らく180cmはある。
…それにしてもこの女性どこかで見たことあるような?
「いえいえ。今さっき買い物に出たとこなんで帰ってくるまでゆっくりしてください。」
「そう?ありがとうね。ん?ところで貴方達は?」
「はじめまして。渡辺航平です。こうちゃんって呼んでください。」
「山本祥彰です。」
「はじめまして。こうちゃんに山本くんか〜よろしくね。」


「へぇ〜QuizKnockってこんなにすごい会社になったんだ〜私の知ってる時代とは全然違うわ(笑)」
「えっ?昔のQuizKnockについてご存知なんですか?」
「設立当初くらいの頃ならね。別に社員だったわけじゃないのにその頃はちょくちょく遊びに行ったっけな〜」
ますますこの女性に対する謎は深まっていく。
僕等がいない頃を知っている人はそう多くない。
一体この女性の正体は?


そんなことを思っていると
「あれっ?美翔さん?」
「おっ、河村くんに川上くん!久しぶり!元気してた?」
「姉さん!それはこっちのセリフですよ。」
「姉さんも元気でしたか?」
「ちょっと2人とも?姉さん呼びはやめなさいって何度言ったらわかるの?年がバレるでしょ💢」
「ははっ、すいません。」
「それにしても美翔さんは変わりませんね。」
「え〜嘘〜私現役の時よりちょっと太ったよ?しかも胸もサイズアップしたし。」
「いや、それはさすがにわからへんわ(笑)」
「だし…なんと身長が伸びました!」
「えっ!また!?」
「そうそう。もうね本当に山本くんが羨ましいわ。」
「山本の身長羨むんですか…」
「だってよ?仕事やめたら身長なんて御役目御免だし街中歩けば気づかれるし…女性で180cm超えると目立ってしょうがないわ。」
「だからってそのサングラスは余計に目立つんじゃ…」
「そう?でもねこれつけないとすぐバレるのよね。」
「有名税ってやつですね(笑)」


ん?待てよ?
「有名税って?あっ、もしかして読者モデルでもやってらっしゃるとか?」
「ちょっ、こうちゃんそれは失礼やで!」
「ふふっ。こうちゃんだっけ?面白い子ね。気に入ったわ。」
「???」
「わー、読者モデルか(笑)私もまだまだね。」
「えっ?」
「???」
俺等2人が頭にハテナを浮かべていると
「あっ!美翔さん!」
「伊沢くん!おかえりなさい。」
伊沢さんが帰ってきた。
「美翔さん。ただいまです。」
「伊沢くん、普通に待ちくたびれたわ(笑)」
「ごめんなさい、ちょっと美翔さん用のお菓子買ってきてて。」
「あら、いいのよ?お気遣いなく。じゃあ私紅茶でも入れようかしら。」
「いいですけど…お客さんなんですから。」
「一応紅茶の国の人なんでね。キッチン借りてもいい?」
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