雅華平安〜夢幻の日々〜

□朝ごはん
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今日の朝ごはんはいたってシンプル。
と、言いつつも普段はTKGとかグラノーラとかで済ますことが多い私にとっては結構頑張ったと思う。




フライパンの鮭もいい感じで美味しそうに仕上がった。
平家の皆様は鮭がパックで切り身になってる時点で驚いてたけどね。




さっ、あとは卵焼きでも作ろうかな〜?
なんて考えながら卵を割っていく。



「蘭子どの〜、ん?それはもしや⁉」
「??卵だけど、どうかした?」
「いや〜その、卵って…」
「大丈夫よ、現世じゃ大体みんな食べてるわ。どころか、物価の優等生なんて言われるくらい値段が安定しているのよ。」





「さっ、出来上がり〜♪みんな〜席に着いて〜」




平安の世からやって来た皆様にとってテーブルと椅子は不慣れなものだと思っていたがそんな心配なんのその。
ここが我が家と言わんばかりの勢いでくつろいでいる。
まあ、ゆっくりしてくれてるならそれでいっか。


でも普段一人暮らしの人間にとっては嬉しくてたまらない。しかもこんなにイケメン達に囲まれてご飯食べれるなんて。
いくら今日がエイプリルフールだとはいえ怖くなるわ。
と、そんなことを考えながら後片付けを終えた。





「蘭子さ〜ん、早く早く〜」
カフェスペースから私を呼ぶ声。
「みんなまだ食べてなかったの?先に食べといても良かったのに。」
「現世では皆でいただきますをしてから食べ始めるんじゃろ?」
「まあ、大抵はそうかな。」
「GIONから聞いたんじゃけど“いただきます”とはええ言葉じゃの〜」
「わしらの時にはそのような考えはなかったな。」
そういえばさっきからGIONちゃんが色々と平家の皆様に平成の食事についてレクチャーしてた。
これが発端らしく、私が来るまで頑なに食べなかったらしい。




「はい、それじゃみんな〜手を合わせてください。いただきます。」
「「「「「いただきます」」」」」







それにしても、GIONちゃんは何気に現世のことに詳しいし機械系にも強い。
不思議に思って本人に聞いても「謎っ子ですから」としか答えは帰って来ないけど。
「いただきます」という言葉自体は大正及び昭和時代に日本人の日常に定着したらしい。と、いうことを先ほどGIONちゃんが教えてくれた。
ほぉ〜っと逆に私が1番驚いたけどそれはここだけの話。
でもね、GIONちゃん。
それは私のスマホです…
とか色々考えてたら目の前にはいつもの朝ごはんとはまるで違う光景が広がっていた。
普段1人で食べているから他人が1人いるだけでもかなり雰囲気は変わる。
が、それにしてもだ。賑やかどころの騒ぎではない。はっきりいってこれは戦争だ。






「兄上〜それはわしの卵焼きですぞ〜」
「お主が遅いから悪いんじゃよ〜」
「兄上の方が鮭が大きいなんて不公平ですぞ〜?」
「兄なんじゃからええんじゃよ!」
「うわ〜兄上大人気な〜い」
子供かよ…







「蘭子さん、この鮭美味しいですよ」
「そう?よかった〜♪新商品用にしようかと思って買っておいただけなんだけどね〜」
まっ、本当のところは先日スーパーの特売日で買いすぎて使い道に困ってたなんてことは口が裂けても言えない。
だって安かったし?
ポイント2倍だったし?





そんなこんなしている間も隣のテーブルはとにかく賑やか。
「GIONちゃん、いつもこの人達ってこんな感じなの〜?」
「はい。逆に今日は静かなくらいですよ?」
ああ、先が思いやられる。
大体、朝ごはんを食べるだけで何故こんなにも騒げるのだろうか?
本当に賑やかな人達だ。
と、思っていると
「蘭子さん、隣いいですか?」
「あら、重盛くんに清盛さんも。別に構いませんよ。」
「まったく…朝餉の時間ぐらい静かに出来んのか?」
「ふふっ、賑やかな兄弟ね。」
「賑やか…まあ確かにな。」
「ええ、少しうるさいとは思うけどやっぱり家族っていいわね」
「そうかの〜?まあ悪くはないが…」
「実はね、私には家族と呼べる家族がいないの。だから、今日こうやって皆様と出会えてとっても嬉しいわ。」
「そうなんですか?それは大変でしたな…」
「まあ確かに苦労もしたけどね。でも、こうやって新しい家族に出会えて私は幸せよ?」




私には家族との思い出は数えるほどしかない。
でも何故かしら?
平家の皆様といると懐かしい気分になるの。
お母さんとお姉ちゃんと一緒に食べるご飯は何故かとても美味しかった。
記憶の片隅にあった家族の記憶。
そんな思い出がふと蘇ってきた。
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