保管庫

□過去拍手お題・昼リクつらで5題
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あともう少しだけ



日が落ちるのが早くなる。
冬だから仕方ないが…


「リクオ様?」


急に立ち止まったから彼女が僕の名を呼び掛けながら首を傾げているだろう。
ほら、横を向いたら既に首を傾げている彼女の顔がすぐ見える。
昼間の自分との身長差は、余り変わらないから彼女を近くに感じる。
まあ、夜になったらなったで、身長差を使って‥ね。


「どうかなされましたか?」


未だに何も言わないから不安そうな顔をしている。
そんな顔も可愛いなあと思いながら僕は、首を振る。


「大した事じゃないよ」
「そうですか?」


そう云ってまた歩き出す。
日が少しずつ暮れていく。
血が少しずつ騒ぎ出す。
夜になると僕は変わる。
見た目もそうだが考え方も少しだけ妖怪寄りになる。
今は別に変わる事に抵抗感はない。
少し目線が変わる。
ただそれだけの事。
しかし、隣に居る彼女に対しては別ものだ。
何がどう別ものかと言うと、彼女が大切な事ただそれだけ。


「つらら」
「はい」


振り向いた彼女の唇を素早く奪う。
同じ身長差、同じ目線、キスを仕掛けるには、ちょうど良い。


「なっ……りっリクオ様?!」


夕日よりも真っ赤になった彼女の反応を見ていたら唇がムズムズして来たので、もう一度キスをする。
やっぱりキスをするには、この身長がやりやすい。そう遠くない将来、今の僕は、彼女の身長を越えるだろう。
屈んでキスするのも好きだけど、すぐにキスが出来る今の身長も気に入ってる。


「さっ早く帰ろう」


そう云って彼女の手を取って家へと向かう。
日が沈む。
血が騒ぎ出す。
あともう少しだけキスする距離の近い、今の僕でいさせて……




END





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