小説

□腐れ縁だから
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朝から外は雨。
ギルドの酒場はいつにも増して賑やかだ。

そんなギルドの一番端のテーブルに、賑やかな雰囲気には似合わない暗いオーラを纏った少女が突っ伏していた。

「はい、ジュビアどうぞ。作りすぎちゃったから特別にサービスよ」
とジュビアの前にホットココアを置いてミラジェーンが去っていく。

「…………」
(ココアを作りすぎちゃう??…わざわざジュビアの為に作ってくれたのかしら)
ミラにお礼を言おうとゆっくり顔を上げるジュビアの視界に入ってきたのは、しかめっ面をしたガジルだった。


「…ガジル君?」
「おい、いつまでしけた面してんだよ」
チッと舌打ちしながらガジルはジュビアに近づいてきた。

「ミラジェーンから聞いたぞ。グレイに冷たくされるのなんざ、いつもの事じゃねーか」
「…鬱陶しい、と言われました」
「…あ?」
「グレイ様は今日はいつものチームの方達と仕事なので、ジュビアも行きたいとは言えず、せめて出発まではとお側におりました。そしたら“朝から鬱陶しいな、お前”と言われてしまいました…」

一気に言い終えたジュビアは、ふうっと息を吐くとガジルに向かって小さく笑いかけた。

「ジュビアは嫌われてしまいました」
「お前なぁ…」
文句を言い掛けてガジルはふと懐かしい面影をジュビアに見た。
(ああ、この感じ、この目つき、俺のよく知るジュビアだ)


「…おい、俺とこれから仕事行くぞ」
「え、ジュビアがですか?」
「ああ。ただ覚悟しろよ、討伐にいく」
「きつい仕事ですか?」
「だな。この生ぬるいギルドの奴らじゃ出来ねえような仕事だ。俺とお前にはピッタリだろ?」
「ふふ、良いですよ。ジュビア、今なら容赦なく出来そう」

ニッコリとした笑顔には似合わない台詞を口にして、ガジルから依頼書を受け取って立ち上がるジュビア。

「ミラさん、今からガジル君とこの仕事行きます」
「はーい…って、これ、結構ハードだけど、平気?まあ、あなた達2人なら大丈夫だとは思うけど…」
ジュビアから依頼書を見せられたミラジェーンは眉を寄せる。

「平気です。ジュビア少し疲れたので、休息でガジル君と仕事に行くんです」
「そお?なんだか矛盾してる発言だったけど…恋愛にちょっと疲れたから、ガジルときつい仕事をわざとして魔導士ジュビアに戻ってくるってことで良いかしら?」
「そう、ですね。では行ってきます」



入り口で待つガジルのもとに駆け寄ると、行きましょうか、と扉をくぐる。
「…何だか懐かしいね、ガジル君とのお仕事。幽鬼のころは良く一緒にしたから…」
「あ?…まあ、そうだな」
ギルドの中で唯一ジュビアが敬語を使わずに気楽に会話出来るガジルとの仕事は、楽しみだった。

「ジュビアが落ち込んでたから、仕事に誘ってくれたんだよね、どうもありがとう。ジュビア、足を引っ張らないように頑張ります」
「………」
返事をしないガジルのほうをちらっと見て、いつもの事ね、とひとり心の中で呟いて駅まで歩き出すジュビア。



(俺はなんでこいつをこんなに構う?)
(前より明るくなった)
(前の冷徹なこいつも俺は気に入ってた)
(あの裸野郎がこいつを変えた)
(その裸野郎のせいで落ち込んで雨を降らす日も多い)
(泣き顔を見るのはごめんだ、めんどくせーからな)
(…こんなに構うのは旧友だから、腐れ縁だから、だな)
(もーすこし様子見といてやるか)

返事をしなかったのは、ごちゃごちゃ考えていたから。
めんどくせーと思いながらもジュビアの為に動くことがあるのは、フェアリーテイルに自分を気にして引き入れたことに感謝しているから。



「…おい、ジュビア。雨上がってんぞ」
「あ、ほんとだ。ガジル君のおかげです」

空には虹まで掛かっている。

END









〜〜〜
あとがき

ガジジュビではないです〜
あくまでガジル+ジュビアで!
好きなのです、この2人の友情!

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