小説

□嫉妬するほど想ってます
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「………あ」
ジュビアは、ガジルと共に行った遠出の仕事先で、グレイに似合うだろうと思ってこっそり買ったお土産の袋をぎゅっと握りしめた。
「グレイ様と、ルーシィ…」
2人きりで座っているテーブルには近づけずそっと様子を見ていると、グレイとルーシィは仲良さそうに笑い合いながら何かを話していた。
太陽のような明るい笑顔のルーシィに、グレイも優しい笑顔を向けている。

(…グレイ様、あんな笑顔、ジュビアには向けてくださらない)
ふっと一度息を吐き出すと、くるりと方向を変えてジュビアは走り出した。

「うおっ!!…おい、アブねーな」
「ジュビア、大丈夫?」
ギルドの入り口付近でナツにぶつかってしまったジュビアは尻餅をついた。心配してナツとハッピーがのぞきこむ。
「……っ、は、い…すみませ…ッ」
途切れ途切れに答えたジュビアは、さっと立ち上がり去ってしまった。

「…?どーしたんだ?」
「ナツぅ…ジュビア、泣いてなかった?」
「泣いてましたね…」
ナツとハッピーの会話に、近くにいたウェンディも加わる。ふと、足下に落ちていた小さな袋をウェンディが見つけて拾った。
「あれ?これは…」

「それ、ジュビアのだぞ。さっき仕事先でこそっと買ってたのを見たからな」
横からガジルがめんどくさそうに言う。
「あの裸野郎への土産じゃねーか?」
と言ってくいっと顎で指す。
グレイはルーシィとまだ一緒にいた。

「なるほどね」
「ミラさん!!何がなるほどなんですか?」
ミラも話に加わる。
「ジュビア泣いてたでしょ?きっとグレイとルーシィが仲良く話してるのを見て、自分には冷たいのにルーシィには優しい…とか思ったんじゃないかしら?」
「そんな…!!どうしたらいいんでしょう?」
ウェンディが困り顔でオロオロし出す。



「どーしたの?皆で集まって…」
すると背後から明るい声を掛けられた。
ルーシィとグレイがこちらに気がついて歩み寄ってくる。
ウェンディがますますオロオロし、ミラは苦笑、ガジルがため息をついたとき、ナツがグレイに向かって袋を押しつけた。
「あ?なんだよこれ」
「ジュビアから、土産だとよ」
「…はあ?なんでてめーが持ってんだよ」

「まあ、落ち着きなさい」
睨み合う2人を宥めるように、ミラジェーンが助け船を出す。
「ナツ、それじゃ相手には伝わらないわよ?…それからグレイ、あなたはもう少しジュビアに気を遣ってはっきりしなさい。あなたの知らない所でジュビアは何度も傷ついてるのよ」

「はあ?何言って…」
訳が分からないといったように抗議しようと口を開いたグレイは、ミラから発せられる威圧的な懐かしいオーラに後ずさりした。

「おい、裸野郎。ジュビアをこれ以上振り回すな。これからまた仕事行くっつーのに、さっきも泣いてた。そういうときのアイツはめんどくせーんだよ」
ガジルがダルそうに言うのに続いてウェンディが口を開く。
「ジュビアさんの気持ちを知っているなら、好きなら好き、嫌いなら嫌いとはっきり言ってあげた方が良いと思います」

「うっ……」
ウェンディにまで指摘されて反論出来なくなったグレイは言葉に詰まる。

「ねえ、もしかして、さっきあたしとグレイが話してたのジュビア見てたの?それで勘違いしてるの?」
ルーシィが納得したように尋ねる。
「ジュビアの誤解解きたいなら、早く行っておいでよ!さっきから外が土砂降りになってるわよ」
窓の外を指さしながらルーシィとハッピーがグレイの背中を押す。

「ったく、めんどくせーな」
そんなことを言いながらも傘も持たずに外へと駆けだしていったグレイを、皆満足そうに見送った。




ジュビアは雨の中を傘もささずトボトボと歩いていた。
「…うぅ…グレイ様…ひっく…」
嗚咽を繰り返すたび、雨足はどんどん強くなっているようだ。

「…あっ」
ふらふらと歩いていたせいか足がもつれ、ばしゃん、と音を立てて地面に膝をついた。
そのまま空を見上げれば、容赦なく激しい雨に打ち付けられる。
「…ふふっ、昔もこうして雨に毎日当たっていたな…そしたらガジル君が傘を渡しに来てくれたりして……」

「他の男思い出してんじゃねーよ、ばーか」
いきなり聞き慣れた低い声に遮られたと思ったら、ジュビアに打ち付けられる雨が無くなった。
振り返って見上げてみると、上半身裸の愛しい人が美しい氷の傘を手に立っていた。

「ぐ、ぐれい、さま…」
ぽたぽたと頬を涙が伝う。
「なんで、ここに…そんなに、濡れて…」

「なんでって…お前がここでこんなに濡れてるからだろ」
手首を掴んで立ち上がらせ、掴んだままジュビアを正面から睨む。
「俺が何かしたか?」

「…い、いえ。ただ、グレイ様はジュビアに笑って話してくれることなんてありませんから、ジュビア嫌われていると今さっきわかって、それで…っ」
話す間にもどんどん頬は濡れていく。
「す、すみません…ルーシィとの仲を邪魔してますね、ジュビア…」
勝手に話を進めるジュビアにグレイは無性にイラッとして強引に抱き寄せた。

「ルーシィとの仲って何だよ?意味わかんねー」
「えっ、ぐ、グレイ様…??」
いきなり引き寄せられ、グレイの腕の中にすっぽりはまったジュビアは混乱して目を回す。
「あ、それ…」
ふとグレイの手首に目を止めるジュビア。
雪の結晶をモチーフにした控えめで品の良いブレスレット……ジュビアが仕事先でグレイにと買ってきたそれだった。
「あれ?なんで?…それよりもグレイ様、つけてくださったんですか?」

「おー。涼しげで良いカンジだ。ありがとなジュビア」
ジュビアの体を自分から離し、正面から見ながら言ってみる。するとジュビアの顔は真っ赤になり、俯いてしまった。

こんなのも悪くないな、とニヤリと笑いながら思うグレイが、目の前の彼女への想いを自覚する日が来るのはいつの日になるのか。

END







〜〜〜
あとがき

嫉妬するジュビアちゃん、可愛くて好きなんですけど…なかなか上手く書けませんでした(^_^;)

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