小説

□嫉妬するほど想ってます2
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昼前くらいから、7月だというのにギルド内は寒かった。足下から凍えるような冷気が酒場全体に広がっている。

「ん?なんだ?」
「あら…冷房、にしては効き過ぎね」
たった今所用から戻ってきたエルザ・スカーレットとミラジェーン・ストラウスという最強の女達が異変に気付き、眉をひそめる。
しかし彼女達にはすぐに原因がわかったらしく、顔を見合わせてやれやれとため息をついてみせる。

「エルザぁ、ミラさん〜」
寒さに震え上がりながらルーシィが近づいてくる。その後ろから苦笑いを浮かべたレビィとカナ。
「2人で何とかしてよー、寒くていられないわよ」




ギルド内の皆が寒さにやられている頃、上半身裸のグレイはアイスコーヒーに入っている氷を食べ、無くなっては自身の魔法で補充しまた食べ、を延々と繰り返していた。
その顔は誰が見てもイライラしているのがわかり、誰も近づけない。
「グレイ」
そんな中、自分の名を呼ぶ声を聞き、視線のみをそちらに向ける。
「何かあったの?」
いつものように厳しい顔で睨むエルザと、対照的に微笑むミラジェーン。
この2人には逆らってはいけない、と幼い頃から体に染み着いている。だが、今のグレイは何故自分がこんなにもイライラしているのかわからない。

「別に…何でもねぇ」
そうそっけなく返せば、エルザがすぐに反応する。
「何でもないわけあるか、馬鹿者。ギルドの皆が凍え死ぬぞ」
「グレイは昔から、すごーくイライラしたり不機嫌になると無意識に魔力が漏れてきちゃうのよねー」
ミラジェーンはくすくすと笑いながら言う。

「んぁ?…あ、悪い」
やっとギルド内の状況に気がついたらしく、慌てて冷気の放出を抑える。


「で?何故イライラしていたんだ?」
エルザに問われて、グレイは視線をさまよわせるが、ある一点で止める。

「ジュビアと、ロキ?」
そこには、水の体と人間ではないために冷気など気にもせずに今まで立っていたジュビアとロキの姿があった。


「…グレイ、ヤキモチ?」
ミラがずばり言うとグレイは狼狽える。
「ばっ…ちげーよ、ミラちゃん!!ただ、何をしてんのかなって」
「グレイ、それがヤキモチというものだ」
「……うっ」
このコンビにはどうしても適わない。




「きゃっ…!!」
そんな会話をしていると、3人の耳に小さな小さな悲鳴が聞こえた。
慌てて見てみると、ロキがジュビアを壁に押しつけて両肩を掴んで見つめていた。そしてその距離がだんだんと近づいて、ジュビアが小さく「やめて…」と呟いたとき、咄嗟にグレイは両手に魔力を集中させた。

「待てグレイ!!ロキもだ!!」
エルザが間に割って入って止める。
グレイの両手をミラが信じられないくらいの力でグッと押さえる。

「離せよミラちゃん、こいつが…っ」
グレイが眉間に深い皺を寄せながら言う。
「あははっ!!」
するとその雰囲気には似つかない明るい笑い声が聞こえた。

「やだなーグレイ。キミはジュビアの事何とも想ってないって言ってたじゃん?…だったら僕がジュビアにどんな事したって関係ないでしょ?」
ロキのそんな言葉を聞いて、ジュビアはシュンと下を向く。
そのジュビアの顎を持ち上げて、上を向かせたロキは、ぐいっと顔を近づけた。

静かに事の成り行きを見守っていたギルドメンバー達は、皆一斉に息を呑む。
さすがのエルザとミラも驚いた顔を見せた。

しかしその直後、ロキの肩をグレイが鷲掴み、ジュビアから引き剥がした。そして、放心状態のジュビアを自分の背中に隠す。
「てめー、何してやがる」
「ホントにはしないよ?だって僕がジュビアの初めてを奪っちゃったら、ジュビア可哀相じゃん。ぜーんぶキミを試すため!」
ウィンクしながらロキが言う。


「はあ?何言って…」
「だからー!!ジュビアが自分以外の男と楽しそうに話してたり、自分以外の男に肩を抱かれたり、自分以外の男に強引にキスされそうになったり……どう?気になったでしょ?イライラしたでしょ??」
ロキはグレイを挑発するようにのぞき込む。
グレイの顔が少し赤らんだのを確認したロキは、満足というように頷く。
「わかった?それが嫉妬なのです」
「し、嫉妬…俺が…??」

そして大人しくなったグレイの耳に、ロキはそっと囁く。
恋愛に一生懸命な彼女が、早く報われますようにと願いを込めて。


“キミがジュビアを早くモノにしないと、僕がジュビアの初めてを全部奪っちゃうよ”

END







〜〜〜
あとがき

グレイ様にも嫉妬させたかったけど、難しくて…駄文すみません!
ロキジュビは一切ありません、ロキは全部冗談ですので…(*´∀`)

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