小説

□甘い夜
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グレイは目眩を感じた。
かなり泥酔しているが、そのせいではない。


医務室のベッドに横たわるジュビアの肌は、いつもならギルドの誰よりも白い。だが今は、しっとりと汗ばみ紅く色づいている。

「……っ、グレ、イ、さま…」
涙と色っぽさを含んだ声がグレイの耳から入り、本能を刺激する。

「…喋んじゃねーよ」
一言そう言って、ジュビアの小さな口を塞ぐように大きな手のひらで覆ってやる。
するとジュビアはぎゅっと目を瞑った。長い睫毛に水滴がついているのが見える。


それを満足そうに眺めたグレイは、ジュビアのしなやかな白い足に優しく触れながら爪先まで手を伸ばす。

「じゃ、いくぞ」
「は、はい…って、痛い!!ぐ、グレイ様、いたい、ですぅ…」
グレイが手に力を入れれば、涙を浮かべながら身をよじるジュビア。


「おいおい、叫ぶな逃げるな。そんなんじゃ出来ねえぞ」
泥酔状態のためか目が据わったグレイは真っ直ぐジュビアを睨む。
「そ、そんなぁ…ジュビア、初めてで、こんなに痛いなんてしらなくて…」
「俺だって初めてなんだけど」

グレイは再び手に力を込める。
「や、あっ!!…もうやめて、ください…」
涙声で訴えるジュビアの弱々しさに、グレイは背筋がぞくぞくした。自分の中のSな部分がどんどんせり上がってくる気がした。

隙を見て四つん這いで逃げ出したジュビアを背後から組み敷いて捕まえた瞬間、ジュビアの「きゃっ」という小さな悲鳴と同時に、医務室の扉が勢いよく開け放たれた。


「グレイ!!!!ストップ!!!!」
「貴様!!仮にもギルド内で一体何をやっているのだ!!」
「そうだよ、ジュビア嫌がってるし…!!」
何故か顔を赤くしたルーシィ、エルザ、レビィが思い思いの言葉を口に乗り込んできた。

「…あ?」
「み、皆さん、どうしたのですか?」

「え?」
3人がよくよく見てみると、ベッドの上でグレイがジュビアに覆い被さってはいるが2人ともしっかり着衣しており、男の方は酒のせいでとろんとした目を、女の方は涙目できょとんとしながら仲間の方を見ている。
「あんた達、ここで何してるの?」


「何って…。ジュビアはひどく酔っ払ったグレイ様に医務室のベッドで少し横になるように勧めたんです」
ベッドに腰掛けながらジュビアが言い出す。
「でも中々寝れねぇから。ジュビアが今日は仕事でたくさん歩いて足が痛いって言うからマッサージしてやってたんだよ」
グレイもその横にどかっと座った。

「マッサージ?」
「はい、グレイ様がジュビアの足の裏を指で押してくれたのですが…痛くて痛くて!!マッサージって初めてなんですが、こんなに痛いものだとは…」
ジュビアが足をさすりながら苦笑した。

「そ、そうなんだ」
ルーシィ、エルザ、レビィは顔を赤くして“それなら良いんだけど…”などと言いながら部屋を出ていく。


「あれ?皆さん、どうしたんでしょう」
訳が分からないというようにジュビアはグレイを見た。
「たぶんお前の声聞いて、盛大に勘違いして慌てて来たんだろ」
ふんっと鼻を鳴らして、ジュビアに背を向けるようにベッドに横になるグレイ。



始めに感じた目眩の原因をグレイはわかった気がした。
(…紛らわしい声出すなよな)

“グ、レイ、さま…っ”
“や、あっ!!もうやめて、ください…”

グレイの頭の中をグルグルと、先程のジュビアのなまめかしい声が再生される。
(あー…絶対寝れねー)


グレイが自分を思って悶々としていることなどつゆ知らず、ジュビアはそっと薄い毛布を横になったグレイにかけた。

「グレイ様、相当酔ってますからね…またジュビアが起こしに来ますから、それまでゆっくりお休みください」
耳元で囁くように言うと、ジュビアはそっと医務室を出て行く。


グレイは自分の煩悩を戒めるように、ひとつ大きなため息をついて頭を掻いた。


END










〜〜〜
あとがき

グレイ様も男!!っていう話にしたかったのですが…書いてるうちに最初の構図から外れていきましたー(´・ω・`)

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