小説

□心優しき化け物
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「ごちそうさまでした」
大量の食器を洗っているミラの元へ、小さめの声が掛けられた。

「はーい…ってジュビア、何にも食べてないじゃない?口に合わなかったかしら、ごめんね」
銀のトレイには、無糖の紅茶とホワイトシチュー、パンがほとんど手をつけられず残っていた。

「あ、いえ…ミラさんのご飯はいつもとっても美味しいです!!ただちょっと最近食欲がなくて…すみません」
申し訳なさそうに謝るジュビアの顔色は青白く、無理に笑顔を作っているようで痛々しかった。数日前より少し痩せた気もする。

「謝ることないわよ、こう毎日暑いと食欲も無くなっちゃうもの。何か悩み事があるなら、私で良ければ聞くし」
天使のような看板娘の微笑みに、ジュビアは少し口角を上げた。
「ありがとうございます、ミラさん。大丈夫です」
そう言って去っていくジュビアの華奢な背中を、ミラはじっと見つめた。
数日前からずっと降り続いている激しい雨が、ギルドの窓を打ち付ける音が響いている。




次の日。
一週間前からハードな仕事に出かけていた最強チームの面々が、傷だらけでギルドへと舞い戻ってきた。
「たっだいま〜!!」
「やっぱギルドは良ーな!!」
「お前ら元気だな…」
「お前達、マスターへの報告が先だ!!」
扉をくぐるや否や、ギルド内はわっと騒がしくなった。


「………ん?」
キョロキョロと辺りを見回すグレイに、ルーシィが声を掛ける。
「なーに?グレイ、どうしたの?」
「あ、いや…いつもなら真っ先に駆け寄ってくるあいつがいねーな、と思って…」
「確かに、そうね…仕事かしら?」
同じ人物をそれぞれ頭に思い浮かべながら、もう一度辺りを見渡す。
「マグノリア周辺はずっと大雨らしいし、あいつに何かあったんじゃねーかって、ちょっと心配だったんだが…」


「おい、もうウジウジすんな。お前のおかげであの男は助かったんだ、それで良いだろ」
2人の会話を遮るように、そんな声がギルドの奥から聞こえてきた。
「あんな台詞、ファントムの頃から言われ慣れてんじゃねーか」

グレイがそっと覗くと、机に突っ伏したジュビアとその近くで腕組みして立つガジルが見えた。ジュビアの肩は心なしか震えている気がする。


「…ガジル君」
ゆっくりと頭を上げたジュビアの目は赤い。やっぱ泣いてたか、とグレイは小さく呟く。

「…ジュビアはやっぱり気味が悪い?化け物?…ガジル君もそう思う?」
「かもな」
ガジルの言葉にうなだれるジュビア。
「お前の水の体が気味悪くて化け物みたいだって言われるならよ、俺の鉄の体も気味悪くて化け物だな。化け物同士明日もきつい討伐行くぞ、それまでにはシャキッとしろよ雨女」
ガジルにしては珍しくひと思いに言い切ると、グレイの方をちらっと見、ギルドを出て行った。



「ジュビア」
ぼーっとどこかを見つめていたジュビアに、グレイは小さく声を掛けた。

「グレイ様…??お帰りなさい、すみません、気が付かなくて…」
正面からジュビアを見ると、一週間前より明らかに痩せたようだった。顔もいつもより更に青白い。

「気味悪い、化け物、って誰かに言われたのか?」
「…ガジル君との仕事の帰り道に川で溺れている男性を見つけたので助けたんです。そしたらそう言われて突き飛ばされて、一目散に逃げられちゃいました」
ジュビアは努めて明るく言っているようで、痛々しい笑みをグレイへと向けた。

「…でも良いんです。子供の頃から言われてましたから…慣れていますし。ファントムでもそうでしたし。ただフェアリーテイルに入ってからは皆さん優しくてそんな事言われてなかったので、久々に言われてちょっとショックだったっていうか…。だから、だいじょう、ぶ…で、す」

グレイに心配させまいと矢継ぎ早に言葉を重ねるジュビアの語尾はとても小さく震えていた。
そんなジュビアを黙って見つめていたグレイは、知らず知らずのうちに眉間に皺が寄る。

「あのなあ、無理して強がったってバレバレなんだよ。お前、悲しかったんだろ?飯も食えねえぐらい傷ついたんだろ?」
グレイの言葉に、ジュビアの大きな目から涙が溢れ出た。
「俺には正直に言えよ、強がんなよ」

そう言うとグレイはくるりとジュビアに背を向けた。これ以上号泣するジュビアを見るのは辛かったのだ。

「お前の水の体、化け物だって思う奴がいたって良いだろ、気にすんな。お前みたいな心優しい化け物なら大歓迎だ…俺は」
「ぐ…グレイ様…!!」

いきなり背中にジュビアが抱きついてきた。
グレイの胸に手を回し、ぎゅうっと力一杯抱きしめてくる。

「ありがとう、ございます…!!グレイ様にそう言っていただけたらジュビア…元気が出そうです…!!」
「そ、そうか、良かった…ジュビア、とりあえず、離れろ」
背中に当たる柔らかい感触に嫌でも反応してしまい、赤面し狼狽えながらグレイはジュビアから離れた。

「グレイ様にそう言って頂けたので、ジュビアは化け物でも良いです。何て言われても、人助けできて良かったです!!」
まだ赤い目を細め、ジュビアは微笑んだ。

「そーか」
いつもの笑顔に戻ったのを見て、あんな悲痛な笑顔は二度と見たくねえなと心で呟いたグレイは、わしゃわしゃとジュビアの頭を撫でた。


END










〜〜〜
あとがき

なんだかグタグタ…(´・ω・`)
すみません。
上手く書けない〜

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