小説

□吐き気の真相
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「あっ…うぅ…」
俺の隣でいつものように同じメニューの昼食をとっていたジュビアが、端正な顔を歪ませて口元を押さえた。

「おい、どうした?」
普段とは違う苦しそうな声に驚き、咄嗟に小さな背中をさすってやる。


「…だ、大丈夫です、すみません…」
弱々しく笑う彼女を見て、自分の眉間に皺が寄るのを感じた。
「大丈夫、じゃねーだろ」
「本当に大丈夫です…グレイ様、ジュビア、お手洗いに行ってきますね」

パタパタと小走りで遠ざかっていくジュビアを見ながら、グレイはひとつ大きくため息をついた。


「うふふ。グレイったら、いつのまに?」
背後から聞こえてきた悪戯っ子のような含みを帯びた声に、グレイは恐る恐る振り返る。

「ミラちゃんにエルザ…どういう意味だよ」
「ジュビアのあれ…悪阻じゃないの?」
「つ、悪阻…!!!グレイ、貴様…ジュビアをまさか…!!!!」
さらりと言い放ったミラジェーンの言葉に、エルザがわなわなと震え出す。

「い、いやいや!!待てよ!!悪阻なんかありえねー!!ジュビアに、その…そういうことは、してねーよ!!まだ!!」
慌てたようにグレイが大声で否定する。

「そ、それもそうだな…お前達がそんな一気に進展するとは思えん」
エルザがひとり納得する中、ミラジェーンはにこにこと微笑んでいた。
(まだ、ねぇ…素直じゃないわね)

「悪阻じゃないなら、ジュビアのあれは一体何なんだ?」
エルザの問いかけにミラと2人で首を傾げたとき、ギルドの扉が勢いよく開けられた。


「…おい、変態氷野郎。ジュビアどこだ」
脇目も振らずにグレイの元へ歩み寄って来たのは、ガジルとリリー。
「…トイレだよ、分かったか?鉄屑野郎」
バチバチと目線を合わせていると、いつの間にかジュビアが戻ってきたようで俺の隣に座った。

「ガジルくん、おはよう」
「あ?…おう。おい、これやるよ、どうせまだ吐いてるんだろ」
「あ、ありがとう…これは?」
ガジルから受け取った小さな包みを開けて、ジュビアは中から緑色の草を取り出した。

「よく効く薬草だとよ。俺が採ってきてやったんだ、有り難く飲みやがれ」
ブスッとしたままガジルはそう言って、ギルドを出て行った。

「薬草?吐く?…なんかあったのか?」
再度グレイが訊ねると、ジュビアは俯きながら話し出す。
「…昨日ガジルくんと行った仕事先で出された食事が、体に合わなかったんです」
おかげで夕べから吐きっぱなしです、と付け加えたジュビアは、ミラと共にカウンターの方へ向かい、薬草をすりつぶしだした。


グレイが複雑な顔でそれを見ていると、渇いた笑い声を小さく上げながらエルザが近づいた。
「残念だったな。まあ、本当の悪阻報告、楽しみにしているぞ。ただし順序は守れ。ジュビアを傷つけたら許さんぞ」
そう早口にまくし立てると、エルザは去ってゆく。

「……うるせ。わかってるっつーの」
少し赤らんだ顔を自らの冷気で冷ましながら、苦いであろう薬草に悪戦苦闘するジュビアの後ろ姿をグレイは見つめていた。


END







〜〜〜
あとがき

更新ものすごく遅れました、すみません(´・ω・`)
そしてこのどうしようもない駄文…
自分が悪阻でつらいので(笑)こんな内容にしてしまいました>_<

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