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□気がつけば青
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今にも崩れてしまいそうな小さな小屋の戸が、風でガタガタと鳴る。
辺り一面の銀世界には似つかない上半身裸の青年が、窓から外を覗いてみる。
吹雪は更に激しさを増しているようだ。
青年はふうっと息をひとつ吐いた。



今は8月である。
ギルドではおそらく、ルーシィを筆頭に暑さで皆参っていることだろう。
しかしここは一年中雪が積もる下界からは閉ざされた雪山。そこに凶悪な盗賊が逃げ込んだということで、ギルドに捕獲の依頼が緊急で入ったのだ。
こういった場所での依頼には、氷を操る魔導士である青年グレイと、自らの体をも水へと変える魔導士ジュビアという寒さに強い2人が派遣されることがほとんどである。


「おい、動けるか?」
「…、あ、はい…平気です」

壁にもたれて目を閉じていたジュビアは、ふらふらと立ち上がった。
朝から悪寒も頭痛も吐き気も激しかったが、想い人から直々に緊急の仕事へと誘われれば彼女は断ることが出来ない。
体調の悪さをグレイには必死で隠しつつ、足手纏いにならぬようにジュビアはここまでついてきた。

「………お前さ、顔色やべえぞ」
「えっ…!!き、気のせい、ですよ?」
彼はおそらく無意識だろうが、顔をぐいっとのぞき込まれたジュビアは赤面し俯きながら答える。
「そーか?ま、何かあれば言えよ」


吹雪に吹き付けられガタガタと音を鳴らす古びた戸をグレイは開け、辺り一面の銀世界へと足を踏み出した。
ジュビアもふらつく足でグレイより2歩ほど離れた後ろを着いていく。


吹雪は激しさを増していく。




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