小説[リクエスト]

□出産育児奮闘記2
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以前書いた、出産育児奮闘記の続編リクエストです。未読の方はぜひそちらからお読みください。
未来のお話が苦手な方はご注意ください。










〜〜〜

「はあっ!?どういうことだよミラちゃんっ」

ガヤガヤと騒がしいギルドの酒場に、それらを黙らせるほどのグレイの声が響き渡った。


「落ち着けや」
自分の妻に飛び付かんばかりに食ってかかるグレイを軽く睨みながら、ラクサスが牽制する。
「大丈夫よラクサス、ありがとう」

「止めたんだけど…聞かなくてね。ごめんねグレイ」
申し訳なさそうにミラジェーンが俯いた。



グレイは一週間ほど前から、臨月の妻ジュビアともうすぐ4歳の息子シルバを置いて渋々自分宛の依頼へと遠くの島まで行っていた。
それを急いでこなし、予定より2日も早くマグノリアと帰ってこれたので嬉々として足取りを早めギルドに着いた途端、目に飛び込んできたのは、妻と共に家にいるはずの息子の姿だった。
否、息子がギルドにいること自体は珍しいことではない。
物怖じせず愛嬌もある息子は、ギルドの魔導士達からも可愛がられ、よちよちとだが歩けるようになったナツとルーシィの娘ルナの手を取って遊ぶというお兄ちゃんらしさを見せたり、先日ようやく首が据わったガジルとレビィの娘ルビィを一生懸命あやしたり等、よくある光景である。

ただいつもと違うのは、息子の側に腰掛け、大きくなったお腹をさすりながらニコニコと見守る妻ジュビアの姿がないことだった。





「は?ジュビア宛ての依頼?」
あからさまに不機嫌な顔と声音で、今聞いた言葉をそのまま繰り返す。
「…うん。何日も日照りが続いて水が無くなって困っている村からみたい。地下から水脈を探してほしいようね…確かにギルドではジュビアにしか出来ないことだわ」
ミラジェーンの言葉を最後まで聞く前に、ガタンと音を立ててグレイは立ち上がる。
「だからって…っ、あいつもう臨月だぞ?いつ産まれてもおかしくねぇんだ!もしものときに近くに医者がいなかったら…っ」

「…私達も止めたんだけど、正義感の強い子だからね、ジュビアは…」
「だからガジルを一緒に行かせたんだよ」
娘を右手で抱えながら、左手でグレイの愛息子と手を繋いでレビィが近付いてきた。
「いくらジュビアが強い魔導士でも、さすがに1人じゃ心配じゃない」
「…ママは大丈夫だって言ってたから、大丈夫だよ?ガジルおじちゃんも、任せとけって言ってたし」
グレイを見上げながら震える声で息子が言う。
ミラとレビィが、父親はしっかりなさい、とでも言うような目でグレイを見つめる。

ふうっと深く息を吐き出した後、グレイは小さな息子の頭をぐしゃりと乱暴に撫でた。
「…あたりめーだ。ジュビアは強いからな」



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