小説[リクエスト]
□キスから始まる夜は長い
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*この作品はリクエスト内容に沿って、付き合っている設定のグレジュビとなっています*
からんからん、と水滴のついたグラスの中で琥珀色の液体に浮かぶ氷が鳴った。
カウンター席の隅で、黒髪の青年が不機嫌さを隠そうともせずにそのグラスの中の液体ーーーアルコール度数の強めの酒を一気に飲み干し、乱暴にテーブルに置く。
「やだなあ。何をそんなに怒ってるの?」
不機嫌な青年とは対照的に、明るい声音が辺りに響いた。
「眉間に皺が寄ってるよ?」
そう言って不機嫌な青年グレイの眉間をトントンと人差し指でつつくのは、オレンジがかった茶髪が特徴的な青年ロキ。
星霊魔導士ルーシィから絶対的な信頼を得ている、彼女の星霊である。
「誰のせいだよ」
「えー?何のこと?」
「とぼけんな!」
今にも掴み掛かりそうな勢いでロキを威嚇するグレイ。そんな彼に臆することもなくロキはただ小さく笑った。
「…もしかして、僕がジュビアと話してたからそんなに怒ってるの?」
「…………っ」
「僕に妬いちゃった?」
「…うるせーな、とっとと星霊界に帰れ」
ほんの小一時間前、グレイが早朝からの仕事を終え、いつものようにギルドに戻ってみれば、これまたいつものように仲間達が大騒ぎしていた。
入口をくぐってすぐ、いつも出迎えてくれる付き合いだして2ヵ月程の彼女ジュビアをキョロキョロと探す。
ふと視界の隅で見慣れた青色が揺れた。
視界の中心に彼女を捕らえれば、顔を真っ赤にしてあわあわと焦っているようだ。
むす、とグレイは自分でもあからさまに不機嫌になったのが分かる。
何故自分のいないところであんなに赤面することがあるんだ?
それ以上に彼の機嫌を急降下させたのは、最近は久しく見ていなかった星霊ロキが、ジュビアが逃げられないように己の腕と壁を最大限に使って囲い込み、顔をこれでもかと言わんばかりに近づけていたからである。
あと数センチ、といったところで氷塊をロキの頭めがけてぶん投げてやった。
それを予知していたかのようにロキはヒョイと避ける。さすが色恋星霊、ジュビアに当たらないように上手くかわした。
ようやくジュビアの瞳にグレイが映る。
途端に顔をぱあっと花のように綻ばせて「お帰りなさいグレイ様!」などと言うものだから、ついつい赤面して「ん」とぶっきらぼうに返しながら明後日の方向を見やる。
…いやいや、そうじゃねえだろ俺。
「ロキ、てめぇ何してたんだよ」
突き刺さるような負のオーラを放ちながら、ロキとジュビアの間に割って入る。
「んー?だってジュビア可愛いんだもん」
「はあ!?」
「うそうそ、違うよ。正確には、ジュビア可哀想なんだもん、かな?」
「意味わかんねーよ」
楽しそうに話すロキにどんどん苛立ちながら掴み掛かろうとする。
すると、腕をくいっと引っ張られた。
「グレイ様っ、やめて!ごめんなさい、ジュビアのせいで…」
目に涙を溜めてうるうるとこちらを見上げるジュビア。
イライラは収まらないが、戦意が一気に削がれたところで、明るい声が響いた。
「はい、終わりー!グレイ、ちょっとジュビア借りてくからね?」
「あ?」
「睨んでもダメよ?」
「………」
小さく舌打ちをしてぷいっと横を向けば、オロオロしているジュビアをルーシィとカナが引っ張っていった。
手持ち無沙汰になった手でがしがしと頭を掻けば、ヤレヤレといった表情でミラジェーンがロキと目を合わせるのが見えた。
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今回は甘くするんだ、絶対!(>_<)誓