小説[リクエスト]

□Triangle Love
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激しい雨が降っていた。
額に張り付いた一筋の髪をかきあげ、ため息を小さくつく。

「さっきまで快晴だったというのに…」

体に打ち付けてくる大粒の雨は、否が応でもひとりの美しい魔導士を連想させる。

(…彼女に何かあったか?)

自分が濡れるのは気にもせず、リオンは足をフェアリーテイルへと向け歩み出した。




豪雨のため街を流れる川の水量も増え、川へは誰一人近付かなくなってきたというのに、河川敷に傘もささずに座り込む人影を目に留めたリオンは、ぴたりと足を止めた。

「…ジュビア?」

普段より少し声を張り、そう呼んでみる。
その人影は、びくっと肩を震わせたかと思うと、ゆっくりとこちらを振り返った。

「…!どうした?何があった!?」

涙と雨でぐちゃぐちゃの顔で振り返ったジュビアに慌てて近寄り、赤く腫らした目元をリオンはそっと指でなぞった。

「…リ、オン、さま?」
しゃくりあげながら、ようやっと自分の名を口にしたジュビアは、さっと顔を背けゴシゴシと目元を拭った。

「…どうかなさったんですか?こんな所で、こんな雨の中傘もささずに…」
「それは俺のセリフだ、ジュビア。君こそ、こんな大雨の中傘も差さずに川沿いに座り込んで…何があったのだ?」

一生懸命に自分から顔を背けるジュビアの肩をガシリと掴み、ぐいっとこちらを向かせた。
赤くなった目と視線がぶつかる。

「ジュビア」
「……ジュビアは雨女、水の魔導士です。雨に打たれるくらい、どうってことありません」
「…嘘だな」
「?…嘘ではないです、ジュビアは雨女」
「そうじゃない。どうってことない、なんて嘘だろう」
真っ直ぐ見つめてそう言ってやるとジュビアは目線を反らして俯いた。

「どうってことない人間が、そんなふうに泣きじゃくるものか」
「そう、ですよね…」
そう呟くと、ジュビアは堰を切ったかのように再び泣き出した。

グレイ様に嫌われてしまった。
助けたかった、それだけなのに。

ジュビアはひたすらそう泣き叫んでいたようだった。
だが、雨足はますます強まり、地面へと打ち付けられる轟音で、彼女の叫び声も泣き声すらも聞こえはしなかった。



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