小説

□色仕掛け大作戦
1ページ/1ページ

「あの…、ルーシィ」

まだ初夏だというのにひたすら暑くてやる気が起きないあたしは、ギルドのカウンター席でだらけながら小説を読んでいた。
そんなとき、背中の方から控えめな声が聞こえたので振り向くと、そこには普段と変わらず暑そうな服装のジュビアがいた。

「どーしたの、ジュビア??ってかあんた見てるだけで暑いんだけどー」

「ジュビア、ルーシィにお願いがありまして…聞いてくれますか??」
もじもじしながら言うジュビアは、暑さなど感じさせず逆に涼しげだ。
(あー、体温調節できるんだっけ??)
そんなことを考えながらジュビアの問いに答える。
「あたしにお願い??…まぁ内容によるかな、とりあえず聞いてみるわ」
そう言うと、ジュビアはぱっと顔を明るくしてあたしに更に近づく。









そして、今に至る。
この時期はお店にずらっと新作水着が並んでいて、女性客で溢れかえっている。

「ジュビア、これなんかどう??」
あたしはジュビアに似合いそうなビキニを差し出す。全体的にスカイブルーとホワイトのドット柄で、胸に大きなリボンがあしらわれてとても可愛らしい。

「可愛いです…!!でも、少し露出が多くないですか??」
恥ずかしそうにジュビアが言うもんだから、可愛くてからかいたくなったあたしは、少し意地悪く笑いながら返す。
「ダメよージュビア!!これくらい出していかないと、グレイに見て貰えないわよ」
「グレイ様に、見て貰えない………わかりました、ジュビア、ルーシィが選んでくれたこれにします!!」



会計に向かったジュビアの背中を見ながら、今日はやけに素直ねー、と苦笑する。

(あの水着ならいくらグレイだってちょっとは意識するわよね??)

ジュビアのお願いは『今度グレイ様と二人きりのお仕事で海に行くので、ルーシィに水着を見立ててほしい』とのこと。

ジュビアのグレイに対する好意はもちろんのこと、グレイの方も誰の目から見てもジュビアを特別視しているのは明らかなのに、お互いが“超”がつくほど鈍感なため、いっこうに進展する気配がない。

これではジュビアが可哀相なので、自分をはじめとするギルドの面々が何かと裏で動いているのだ。

「これで晴れて付き合うことになったら、キューピットはあたしね」
ふふん、と含み笑いをしたとき、会計を終わらせたジュビアがニコニコ笑顔で近づいてきた。

「ルーシィ、お待たせしてすみません!!この通り、買えました!!今日は付き合ってもらってありがとうございます」
ジュビアがほんとに嬉しそうに言うもんだから、何だかあたしまで嬉しくなってくる。

「別にいいわよー!!その代わり海で何か進展あったら、真っ先にあたしに報告してよね」
ぱちんとウィンクして、あたしはジュビアと店を出てギルドへ向かった。












数日後。

グレイとジュビアが海での仕事を終わらせて、ようやくギルドへと戻ってきた。
「今帰った」
「…ただいま帰りました」
待ちかまえてたあたしは、2人の雰囲気にギョッとする。
むすっとして不機嫌そうなグレイに、今にも溶けてなくなりそうな落ち込み方のジュビア。

「ちょっとちょっと!!どーしたのよ、ジュビア…!!水着は??」
ジュビアの腕をとり詰め寄る。
「る、ルーシィ…」
あたしの顔を見るなり、ジュビアの目には涙が溜まっていき、すぐに溢れ出す。
「ジュビアには、あの水着、似合わなかったようです…海で水着に着替えた途端、グレイ様は、見てもくれず、上着を掛けられて…」
途切れ途切れに言うジュビアの言葉を聞いて、あたしはグレイの方を見る。

「グレイ、どういうつもり??」
「…あ?」
相変わらず不機嫌そうなグレイがこっちを向く。

「ジュビアがどんな想いであの水着買ったと思ってんの??あんたに喜んで貰うため、あんたに綺麗って言ってもらいたいため!!…それを見もしないで隠すって、どーいうつもりなのよ」
あたしはヒートアップしてきて、つい大声になった。ギルドで騒いでた皆が、何事かとこちらを注目して静かになる。


「あ、あの…ルーシィ、もう良いですから。ジュビアが似合わなかったのが悪くて、グレイ様は悪くないですので…」
「ジュビアは黙ってて!!」

「………んだよ」
グレイがポツリと言った。が聞こえない。
「…似合ってないわけじゃねェよ、周りの男共がみんなジュビアを見てたんだよ」

「………へ??」
あたしはその言い訳にぽかんとする。ジュビアも、ギルドもみんなも。

「グ、グレイ様…??あ、あの、どういう…」
ジュビアは頭の上にハテナマークをいっぱい飛ばして混乱してるけど、あたしや他の皆は理解してニヤニヤと笑えてくる。


「なるほど、そーいうことね。…でもグレイ、ジュビアにははっきり言わなきゃ伝わらないわよ??」
「………ッ///」
グレイの顔が赤くなる。
あたしはグレイとジュビアをそこに残して、エルザやミラさんのいる方へ向かった。

「ルーシィ、お疲れ様。さあ、ここからグレイが何てジュビアに言うか、ね!!」
ミラさんがにこにこ言うと、エルザや周りにいた皆がうんうんと頷いた。



「…あの、グレイ様。さっきのは、どういう意味ですか??」
ジュビアがうるうるした目でグレイを見上げる。
「わかんねーの??…お前、恋愛恋愛言う割に、すげー鈍感なんだな」
「す、すみません…」
照れ隠しなのか冷たく返すグレイに、ギルドの皆からの視線が刺さる。

「あー、もう!!わかったよ、言やぁ良いんだろ!!…ジュビア、俺がお前を隠したのは、お前の体を他のやつらが見てるのが嫌だったんだよ!!」
「…え…ッ//」
ぽんっとジュビアの顔が真っ赤になる。
「そんなに俺に見せたいんだったらなァ、俺の家にでも来て見せてくれよ!!」
「グレイ、様…」
顔を真っ赤にして頬を両手で包むジュビアは可愛くてあたし達は笑顔になる。


「しっかし、今のは大胆発言ね」
「ああ。グレイにしては、な」
「俺の家で水着になれってことでしょ??」
「あら、そうね。純粋なジュビアじゃ危ないかしら…」
「グレイも一応男だからね」
ガールズトークに、いつの間にか出てきたロキも加わり、あたし達は勝手な想像をする。

「おい、てめぇら、全部聞こえてんぞ」
グレイの氷のような冷たい視線があたし達に刺さる。
それでもグレイの右手はジュビアの左手首をしっかりと掴んでいて、一歩前進かしら、とあたしはこっそり笑う。

END










〜〜〜
あとがき

だらだらと長くなってすみません。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ


©フォレストページ