小説[リクエスト]

□涙雨
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それは数時間前に遡る。


ジュビアはフェアリーテイルのギルドにいた。皆仕事へ行っているのか、人はまばらだった。ジュビアは昨夜から体調が悪く、皆の反対もあり仕事を諦めてギルドの一番奥のテーブルに突っ伏している。

(なんなのかしら、力が入らない…)

自分の体の不調を不審に思っていると、邪悪な魔力を突然感じ、ジュビアは重たい頭を上げた。

(なにか、くる…)

そう思った瞬間、ギルドの扉が勢いよく開かれた。

「ファントムの奴ら、どこにいやがる」
数人の男達が鋭い目でギルドを見回す。
今は生憎主要メンバーは皆留守にしていたため、彼らに対抗出来るような者はいなく、ジュビアはフラフラと立ち上がった。

「あ、あの女、昨日俺が魔道具で…」
「なるほど、じゃあテメーがジュビア・ロクサーだな?…どうだ?体は。力が入らないだろ?得意の魔法も使えねぇだろ」
リーダー格の男が下品な笑い声を上げながら言う。

「………何のことですか?ジュビアは至って普通です。魔法だって…」
そう言ってジュビアは男達に、水で造り上げた刃を向けた。
「ほお。魔力を死ぬまで吸い続けるこの魔道具の標的になっても、まだ魔法を使えるとは…流石は大海のジュビア」

(なるほど…だから力が入らないのね)
理解したが顔には出さず、ジュビアは問う。
「で?何故ジュビアにそれを?」

「お前を捕獲しろってのが我らがマスターの命令だからな」
「ジュビアを?何故?…それよりもマスター?ギルド…あなた達闇ギルド?」
「ああ、そうさ。俺らはお前とガジル・レッドフォックスによって壊滅させられた闇ギルドだよ」
ジュビアは思い出そうとするが、何せ当時は様々な闇ギルドや人を破滅に追いやっていたため、全く覚えていない。

「覚えてねーって顔だな。おい、やれ」
そう言われて、男達がジュビアを囲んだ。







その頃、ギルドの近くまで帰ってきたナツ、ルーシィ、エルザ、グレイ、ウェンディとハッピー、シャルルの最強チームは、ギルドの方向から発せられる邪悪な魔力と、弱々しいジュビアの魔力に気付き街を走っていた。

「ちょっと!!この気持ち悪い魔力なんなのよー!!」
「さあ、ギルドの誰かじゃなさそーだな」
走りながらもルーシィとナツが大きな声で話している。

「それよりも私はジュビアさんの魔力のほうが気になります、こんなに弱々しい…」
「確かに、今朝は調子悪そうだったわね、ジュビア」
ウェンディとシャルルの会話を聞いて、グレイは更に足を速める。
「話は後だ、走れ!!!」
エルザの一声につられ、一同は急ぐ。








「う…ッ………あ」
ジュビアは床に両膝をついた。
敵の言った通り、いつものように体が水に変化せず、左の肩から脇腹まで背中をざっくりと切られた。血が床にどんどん広がる。
霞む視界でギルドを見回すと、数人の怯えて隠れるあまり知らないメンバーが見えた。
「やっぱり、ジュビアは、ファントム、だから、助けては、くれない…?」
途切れ途切れにそう言うと、リーダー格の男がジュビアを担ぎ上げながら言う。
「だな。お前みたいな非情な女、誰も助けに来ちゃくれねーな」
「…ぐ、れ………ま」




次の瞬間、最強チームがギルドに到着する。
「「ジュビア!!!!」」
エルザとルーシィの声が重なってジュビアの名を呼んだ。

血まみれでぐったりするジュビアを見て、息を呑むウェンディ。

ナツとグレイが一歩前に出て臨戦態勢に入ったとき、男の1人が魔道具を取り出した。するとギルド内に白い煙が充満する。

「うっ……」
煙を一瞬吸ってしまったグレイは、ぐらぐら揺れる頭を持ち上げ、男達を、ジュビアを見やる。
「…じゅ、び、あ」
回りではナツも、ルーシィも、エルザでさえも動けないでいた。
手を伸ばすが届くはずもない。

霞んでほぼ見えない目をうっすらとジュビアが開くと、顔を苦痛に歪め、こちらに手を伸ばすグレイが見えた、ような気がした。
ジュビアは、辛うじて動く右手をグレイに向かって少し持ち上げた。
「ぐ、れ………」

ほんの微かなジュビアの声を耳に、グレイは意識を手放した。






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