小説[リクエスト]

□涙雨
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それから少し経った。
買い出しに出ていたミラジェーンとそれに付き合っていたラクサスという強者コンビは、開けっ放しになっていたギルドの入り口で中の状況を見て取り、一瞬動きが止まった。


「なっ…に、この状況、すごい血」
「おいミラ、とりあえずここのぶっ倒れてる奴らを何とかするぞ」
「え、ええ…」
ミラは近くに倒れているエルザとルーシィに近寄って頬を軽く叩く。

「エルザっ、ルーシィ…しっかりして!!ウェンディも…」
「おい、おめーらも起きやがれ」

「ん……ぅ」
すると皆は少しずつ意識が戻り始める。
「あ、れ?あたし、何で寝て…」
「奴らの出した煙…強い催眠ガスか…?」
ルーシィとエルザがゆっくり起き上がった。

その直後、いきなりガバッとグレイが起きあがる。顔は青白い。
「ジュビア…ジュビアは?」
「ジュビアはいないみたいだけど、何があったの?この状況…」
ミラが眉をひそめながら答える。

「…この血、ジュビアさんのなんです…」
ウェンディがシャルルを抱きしめながら小さく言った。
それを聞いて、ミラとラクサスが顔を見合わせた時、ギルドの端に隠れていたらしきメンバー数人がそっと出てきた。
「…あの、俺たち、最初からずっと見てました。状況説明なら、出来ます」




「…という感じでした」
見ていたメンバー達は、起きたこと、ジュビアや男達が言ったことまで事細かく皆に伝えた。
それを黙って聞いていたグレイは、いきなり話していた男の胸倉に掴み掛かる。

「てめーら、見てたのにあいつのこと守ろうとしなかったのかよ!!!!」
「す、すみませんっ、怖くて…」
「あ?そんなんが怖くて魔導士やってんじゃねーよ!!!」
鬼の形相のグレイにどんどん萎んでいく若いメンバー達。見かねたエルザが間に入る。

「よさないか、グレイ。この者達にはそんなことは無理だ」
じっとグレイは動きを止めた。そして胸倉から手を離し、がっくりとうなだれた。
「なあ、あいつ…自分がファントムだから助けてもらえない、って最後そう言ったんだろ…?」
「は、はい…」
「そんな思いのまま、絶望したまま、連れてかれたのか…」
グレイがぽつりと呟いたとき、慌ただしく誰かがギルドに入ってきた。



「おい、ジュビア!!!!どこだ!!!!」
「ジュビアは無事か!??」
ボロボロのガジルとリリーだ。キョロキョロと辺りを見回して、床に流れた大量の血に目を止め、ガジルは顔をしかめた。
「この匂い、ジュビアの血か。間に合わなかった…?」

「おいガジル、どういうことだ?」
「なんでジュビアのことを…」
ナツとルーシィがほぼ同時に聞いた。
ガジルは腕組みをしてため息を一度つく。
「さっき数人の闇ギルドの奴らに囲まれたんだよ。俺は返り討ちにしてやったが、そいつらジュビアには命を削る魔道具だか何かを試すって言ってたからな、急いで帰ってきたんだよ」


しばしの沈黙の後ルーシィが“ジュビア…”と呟くのが皆には聞こえた。
グレイは何も言わずに立ち上がり、ギルドの外へ出ようとする。

「グレイ?」
「俺は、追う」
グレイは道を指さした。ジュビアの傷から流れているであろう血が延々と続いていた。
「…わかった。私達も後から向かう」
エルザの声は最後まで聞かずにグレイは走り出した。




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