小説[リクエスト]

□涙雨
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「…んぅ……」
ジュビアがうっすらと目を開くと、見慣れない天井が見えた。
ジメジメとしていて薄汚い。

体を起こそうとしたが、背中に走った激痛のせいで断念した。両手首は後ろ手に縛られているようだ。

目線だけをキョロキョロとさまよわせてみると、部屋の唯一の出入り口である小さな扉の前に、先程のリーダー格の男が仁王立ちしているのが目に入った。


「やっとお目覚めか。おい、聞け。我らがマスターはお前を一目見て興味を持ったようだ。良かったな、でなきゃこのまま拷問のようになぶり殺しだったんだぞ」
その男は一息に言うと、ジュビアを乱暴に肩に担ぎ上げた。

「う…っ、ああっ…」
ポタポタと背中から血が滴る。激痛に慣れてしまったのか、痛みがぼやけてきた。





ジュビアはそのまま無駄に煌びやかな扉の前まで連れてこられた。
中には王座のようなものがあり、そこには一際巨漢の男が座っていた。

「マスター、先程お見せした元幽鬼の支配者のジュビア・ロクサーを連れてきました」
その男は肩からジュビアをドサッと落とすと、部屋の入り口まで下がった。

「貴様が大海のジュビア…あの時は鉄竜のガジルと共に我々を散々に壊滅してくれたなぁ…やっと仕返し出来るというわけだ」
ニヤニヤといやらしい笑いを浮かべながら、マスターと呼ばれた巨漢の男はジュビアの元へ近づいてきた。
そしてジュビアの顎を持ち、くいっと持ち上げると自分の顔を近づける。男の臭い息に、ジュビアは微かに顔をしかめた。

「捕獲に成功したのが鉄竜じゃなくテメーで良かったぜ、俺は何よりも女が好物なんだ」
その男に激しい嫌悪感を抱きながらも、ジュビアはそっと安堵した。

(…ということは…ガジル君は無事?…ガジル君なら当たり前か、でも良かった…)



男はジュビアの緩くウェーブした艶やかな髪を鷲掴み、体を持ち上げ、頭の先から爪先までじっとりと見た。
「喜べ。お前は死ぬまで俺が飼ってやるぞ」
「飼う?…生憎ですが、ジュビアは貴方の奴隷になるくらいなら今ここで自害します」
きりっとした目でジュビアは睨み返す。

「…そうか」
男の額に青筋が浮くのが見えたと思ったら、男の手は素早くジュビアのボロボロのワンピースを掴み、思い切り手を引いた。



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