小説[リクエスト]

□出産育児奮闘記
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一方その頃、騒がしいギルドの酒場はより一層賑やかになっていた。
別々に仕事に行っていたはずのナツ、ガジル、グレイが何故かほぼ同時に帰ってきたからである。


「お帰りなさい、偶然ね、みんな一緒に帰ってくるなんて」
「ただいまミラちゃん。ジュビアは?」
「ジュビアなら、ルーシィとレビィと一緒に書庫の整理をしてくれてるわよ」
「書庫?…重いもん持ってねーだろうな、高いとこ登ったりしてねーよな…。ちょい見に行ってくるわ」

そう告げて急ぎ足で書庫へと向かうグレイの背中を見ながら、ミラジェーンはにこにこと微笑む。
「うふふ…良いわね、父親の顔になってきてるわ」

「けどよー、過保護すぎねえか?」
「いーだろ。ジュビアの片思い中はいい加減にあしらってたんだから、あれくらい」
2人の滅竜魔導士は、いつの間にかミラジェーンの横で会話に加わっている。

「あら、ガジル。ジュビアに優しいじゃなーい」
「あほか。レビィがよくそう言ってんだよ」
「お。それならルーシィも言ってたな!今のジュビア見てるとこっちまで幸せだって」

2人とも自身の愛妻を思い浮かべる。
「良いわね。結婚してから、あなた達も優しい顔になったわ」
ミラジェーンはふふっと満足げに微笑むと、カウンターの奥へと消えていった。





グレイは書庫へと続く廊下を歩いていた。
するとそこに、ルーシィの甲高い声が聞こえた。
「ジュビア!!!!」

慌てて走り駆けつけると、床にへたり込むジュビアが目に入る。
「おい、何があった?!」
「グレイ…!!ジュビアが足を滑らせてこけちゃって…!!」
涙目のルーシィとレビィを横目に、グレイはジュビアへと駆けよった。

「おい!大丈夫か?」
「ぐ、グレイ様…ごめんなさい、赤ちゃんがいるのに、転んじゃいました……あっ?!!」
俯いていたジュビアが急に大きな声を出したかと思ったら、すぐさま透明な液体が床に広がっていく。

「こ、これって…」
「破水、しちゃったみたいです…病院行かなきゃ…」

当の本人よりも、周りの3人のほうがパニックになりながらジュビアを担ぎ上げて、ようやっとギルドのメインホールまでたどり着いた。


騒ぎを聞きつけたギルドのメンバーがガヤガヤと集まってきた。
「ジュビア、大丈夫?」
「痛くねーのか?」

「…破水しただけですから…痛みはまだないです」
グレイに抱き上げられながらジュビアは答える。

「ジュビア、タオル持ってきたからこれ使って」
さりげなくミラジェーンがジュビアの腰元にタオルを巻いた。
「ミラさん、ありがとうございます…では病院に行ってきますね」


急ぎ足でギルドを出て行くグレイの背中を皆で見送りつつ、ルーシィは右手をぐっと握りしめた。
その右手をナツの暖かい手がガシッと掴み、大丈夫だと言わんばかりに妻に笑いかけた。




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