小説[リクエスト]

□黄金色の嫉妬
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ばたん、と乱暴に玄関の戸を後ろ手で閉めたルーシィは、その場にへたり込む。
自宅ではもとより我慢するつもりもなかったが、涙が頬を次々と伝っていった。

(なんでこんなに泣いてるんだろう)
(なんでこんなに胸が痛むんだろう)

ひとしきり泣いて涙も枯れた後で、自分の中で先程の疑問が自然に解けた気がした。

(…あ、そっか。あたし、ナツのこと…)
“好きなんだ”はわざと言わないでおいた。
泣いている最中に落としたのか、足下にはすっかり冷めたパンが散らばっている。
その中のひとつをおもむろに手に取り、ルーシィはかじった。




「ちょっとナツ!ルーシィ絶対勘違いしてるよ!」
右手の人差し指をビシッとナツに突きつけて、リサーナは声を荒げた。
「勘違いったって…何を勘違いすんだ?」
訳がわからないといった顔で目尻を上げるナツに、リサーナは軽いため息をついた。

「あのねナツ……まあ、とりあえずルーシィのとこ行って説明しておいでよ」
「いや、だから、説明って何を…」
「もうっ!鈍感ね!いいからナツの気持ちをルーシィに伝えてきなよ、今すぐ」
そう早口に言ってリサーナはナツの背中をグイグイ押す。

お、おう…と軽く返事をして、ナツは行き慣れたルーシィの家への道を走り出した。

「頑張ってねー、お幸せに!」
大きく手を振ってナツの背中に声を掛けた後、行き場を失った手で顔を覆い小さな肩を震わせ始めたリサーナに、そろそろと近付いたハッピーは慰めるかのように肩にちょこんと乗った。



「……大好きな人には、大好きな人と幸せになってほしいからね」

少女の目からこぼれ落ちる涙は、しばらく止まりそうにない。



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