小説[リクエスト]
□君との未来は虹色であると願う
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バンっと大きな音をたてて駅員室の扉が開けられた。それと同時に焦ったような低い声が聞こえる。
「おい、ジュビア、大丈夫か?!」
慌てて走ってきたであろうその男は肩で息をしながら駅員室の椅子で縮こまる少女へと足早に近付いた。
ーージュビア、っつうのか。
そんな事を考えながら、その姿を横目でチラリと見た俺は驚愕した。
「が…ガジル!?」
「あ?…グレイ、何でお前がここにいんだよ」
相変わらずの仏頂面でこちらを一瞥した後、すぐさまガジルは視線をジュビアへと移す。
「遅くなったら待ってろっつっただろーが」
「ご、ごめんなさい…」
小さな小さな声で謝ると、ジュビアは更に縮こまった。
深くため息をひとつついたガジルが、今度はこちらを見やる。
「…で?お前がその痴漢野郎か?」
「はぁ?んな訳ねーだろ!」
「ガジルくん!…この方が、ジュビアを、助けてくれたんです…」
小さくなってうなだれていたジュビアが、バッと立ち上がってそう言った。極々小さな声で。
「…わかったわかった、んな気張って声出すなよ」
ガジルがポンポンと少女の頭に手を乗せる。
ーー気張って声出す?
頭に疑問符をたくさん浮かべながら、俺はずっと気になっていたことを口にした。
「で?なんでこの子の保護者がお前なんだよ?」
2人が揃って俺に振り向いた。
…確かさっき駅員が、保護者に連絡したいとかでこの子に電話番号を聞いてた。それがこの仏頂面で札付きのワルだったってことかよ。
「…………」
「こいつには、家族いねぇから」
困ったような顔をしてガジルと俺を交互に見ていたジュビアの代わりに、ガジルがそう答えた。
「あ、あの、ガジルくんは、幼なじみのお兄ちゃんなんです。昔から、ジュビアのことを気にかけてくれて…、あ。すみませんっ、ジュビアといいます、助けてくれてありがとうございます」
顔を赤に染めながらそう言いきると、ジュビアは手で顔を覆ってしまった。
…不覚にもドキリと心臓が跳ねる。
そんなジュビアを、ガジルがびっくりしたような顔で見ていた。
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