小説[リクエスト]

□出産育児奮闘記3
2ページ/3ページ

「あの、ジュビアは…大丈夫なんですか?」
式場のスタッフの迅速な対応のお陰で、すぐさまジュビアは病院へと運ばれた。
「…、全く、こんな体で病院にも来ていないとは。聞けばあなた方はギルドに所属する魔導士…この方は危険な仕事もしていたようですね」
中年で大柄な医師が、やれやれといったふうに首を振った。
危険な仕事…。ああ、結婚後もジュビアはよくガジルと2人で報酬の良い討伐系のクエストばかり行ってるっけ。…グレイがいっつも心配してたなぁ。

「あ、あの、こんな体って。…そんなに悪いんですか?」
聞き捨てならない言葉を耳にして、慌てて聞き返す。

「酷い貧血ですね。…まあ、悪阻が激しく、ほとんど食べられていないようだから無理もない」
医師は淡々と説明しながらベッドに横たわるジュビアを見た。
つられてあたしも点滴が繋がれたジュビアを見つつ、目を丸くさせる。
「つ、つわりって…あの悪阻?」
「ええ、あの悪阻です。彼女、妊娠していますね、16週目といったところでしょう」


=====


その報告を受けたのは、妻が倒れた日の夜中だった。
ナツとエルザとの随分ハードな仕事が終わり、疲れて汚れきった体に鞭を打ってギルドまで辿り着いたところで、ミラジェーンが珍しく動揺した顔で近付いてきた。

“ジュビアが昼間倒れたらしいの。詳しく判らないけど、今は病院でルーシィが付き添ってるわ。早く行ってあげて!”

咄嗟に理解できず固まっていると、バシッと背中を叩かれた。
「何をしてる、グレイ!さっさと病院まで走らんか!」
険しい顔でこちらを睨みながらエルザが叫ぶ。

やっと我に返ったところで「悪ィ」とだけ呟くと、踵を返して走り出す。
「ルーシィがいるなら俺も行く」とナツが後ろを着いて走ってきたが、そんなことは気にも止めぬまま足を速める。

なにがあった?
仕事で失敗?…いや、今日は仕事もなくルーシィに付き合うって言ってたな。
途中で何かに巻き込まれた?…あいつ自己犠牲の塊だからな、誰かを庇ったとか。
それともなんか病気?俺に隠してたとか……

マイナスの思考はぐるぐると頭を駆け巡ってキリがない。

余程思い詰めた顔をしていたのだろう、バシッとナツに頭を叩かれた。
「似合わねえツラしてんなよ、大丈夫だっつの」
「……………おう」
「道に落ちてたもん拾って食ってやられた、とかだろ、きっと」
「…人の嫁をテメーと一緒にすんな」
軽く睨み返すと、白い歯を見せながらナツが笑った。


→→→→→
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ