短編
□偽り
1ページ/1ページ
ちゃんと、理解しているつもりだった。
頭では、ちゃんと…
偽りの弟を演じることは、僕の大事な任務だし、初めはいつも通り楽にこなせると思っていた。
けど、信じられなかったんだ。
僕の名前を呼ぶ声も、あの優しい眼差も、どれを取ってもゼロとは結び付かなくて…
家族なんて知らない僕が、
家族なんて、いらないと思っていた僕が、
兄弟って…
家族っていいなって…
そう思えるようになったのは、この人のお陰なんだ。
だから、失うのが怖いんだ。
例えたった一人の、偽りの兄だとしても───
「兄さん…っ…はぁ」
何処にぶつければいいかわからない、この感情はなんだろう?
どうして、僕はあの人を思い浮かべて、こんな事をしているんだろう?
わからない。
それでも、手が勝手に動いて、毎晩身体が熱くなる。
脳裏に浮かぶ、兄の顔。
偽りの兄の顔。
この感情は何?
誰が答えてよ。
「兄さんっ…兄さ…ぁ…はぁ」
頭ではわかっているのに…
身体があなたを求めて、言うことを聞かないんだ。
ねぇ、兄さん…
僕はあなたのたった一人の弟だよ。
偽りだらけの僕にあるたった一つの真実。
それはあなたを求める、この感情…ただ一つ。
END
2008.04.21 up
TURN3を見た後の妄想、ロロ→ルルでした。