短編

□悪夢の後は
1ページ/1ページ




深夜、いつものようにルルーシュのベッドで寝ていた私は、何かが唇に触れていると思い、目を覚ました。



それがルルーシュの唇だと気づくのに、そう時間はかからない。


甘く、優しく、そしてどこか悲しいキスを、なれないくせに懸命に送るルルーシュ。



「…どうした?」



暗くてよく見えないが、ルルーシュの瞳には涙。



ルルーシュは何も言わない。


私の身体を震える手で強く抱きしめて、声に出さずに泣いていた。



「怖い夢でも見たのか?」


母親にすがる小さな子供のように、ルルーシュは私の肩を濡らしす。



その漆黒の髪を撫で、子供をあやす母親のように、私はルルーシュを優しく抱きしめた。




「…な」



絞り出した声で、ルルーシュは言う。



「お前だけは、どこにも行かないでくれ…」


涙に濡れた瞳で、ルルーシュは私を見つめる。



「   」



不意に本当の名を呼ばれた。



「   」



何度も、何度も…




「   …っお前だけは…ずっと」




「わかった…わかったから、もうその名で私を呼ぶな」



今度は私が、ルルーシュにキスをした。





深くて甘い、キスをした。


──王の力はお前を孤独にする──





けれど、私だけは、お前のそばにいる。




きっと、夢を見たんだろう。



誰もいなくなってしまう夢を。


自分の手で、大切な人の命を奪う夢を。


私がいなくなる夢を…






そんな夢、忘れてしまえ。





なぁ、ルルーシュ。




私はお前が好きすぎて、おかしくなってしまったようだ。



お前のキス一つで、




私は溶けてしまいそうだよ。






悪夢の後は



甘いキスをお前に───





END



2008.04.26
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ