短編
□悪夢の後は
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深夜、いつものようにルルーシュのベッドで寝ていた私は、何かが唇に触れていると思い、目を覚ました。
それがルルーシュの唇だと気づくのに、そう時間はかからない。
甘く、優しく、そしてどこか悲しいキスを、なれないくせに懸命に送るルルーシュ。
「…どうした?」
暗くてよく見えないが、ルルーシュの瞳には涙。
ルルーシュは何も言わない。
私の身体を震える手で強く抱きしめて、声に出さずに泣いていた。
「怖い夢でも見たのか?」
母親にすがる小さな子供のように、ルルーシュは私の肩を濡らしす。
その漆黒の髪を撫で、子供をあやす母親のように、私はルルーシュを優しく抱きしめた。
「…な」
絞り出した声で、ルルーシュは言う。
「お前だけは、どこにも行かないでくれ…」
涙に濡れた瞳で、ルルーシュは私を見つめる。
「 」
不意に本当の名を呼ばれた。
「 」
何度も、何度も…
「 …っお前だけは…ずっと」
「わかった…わかったから、もうその名で私を呼ぶな」
今度は私が、ルルーシュにキスをした。
深くて甘い、キスをした。
──王の力はお前を孤独にする──
けれど、私だけは、お前のそばにいる。
きっと、夢を見たんだろう。
誰もいなくなってしまう夢を。
自分の手で、大切な人の命を奪う夢を。
私がいなくなる夢を…
そんな夢、忘れてしまえ。
なぁ、ルルーシュ。
私はお前が好きすぎて、おかしくなってしまったようだ。
お前のキス一つで、
私は溶けてしまいそうだよ。
悪夢の後は
甘いキスをお前に───
END
2008.04.26