FAIAY TAIL

□黒猫が横切ったら何とやら。
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「ここが、依頼の神殿か」



石で出来た古びた大きな門の前に、アリーサが慎重な面持ちで立っていた。





『アリーサ、頼みがあるんじゃが、グルートという島にある神殿を、調査をしてくれんか』
『神殿?』
『うむ…そこの村の住人から、依頼がきてのう。過去に、そこへ遺跡の発掘へ行った住人たちが、大きな猫の化け物に襲われ怪我人が、続出したらしくてな』
『…なぁんかめんどくさそうな依頼じゃな』
『まぁまぁ…その化け物退治は、表としての依頼じゃ』



……実は、そこの遺跡に、お前が探してるものがあるんじゃよ。





FTのマスターから依頼で、この地に降り立ったアリーサは、依頼の真相を思い出しながら、すでに崩壊した銅像に触れ、辺りを見渡す。


「うーむ…特別なモノは感じはせんがのう」


キョロキョロと、辺りを見渡しながら、神殿の中へと入った。


「(村人たちが、襲われ始めたのが、半年前から…しかし、今までそんな事は、起きた事が無かった)」


何かのキッカケで、猫の化け物が出現した可能性があるかもしれない。
酒場で、情報をかき集めようとしたが、住人達は口を閉ざしている。
何故…?化け物退治を依頼しているなら、口を閉ざす必要がないはずだ。
だが、今の状況では、あまりにも情報が少ない。


「仕方ない、村に戻って、もう一度、情報集めるか」





「…ん?」


ふと動く影に、アリーサの足が止まった。
ガサガサと動く草むらへと足を伸ばす。


「だーれじゃ?」
「んげっ!?」
「なんじゃ、子供か。ここは、お前さんの様な子供が、来るような場所じゃないぞ。しかも、遺跡は出入り禁止の筈じゃが…?」


ひょいと軽々と持ち上げたのは、10歳ぐらいの少年だった。
その少年は、しまったと青褪めたかと思えば、キッと目つきを鋭くし、アリーサを睨んだ。


「う、うるせー!!くそばばぁ!!」
「おお、開き直った生意気な子供じゃのう」
「大人にちくったら、容赦しねぇからな!!」
「生意気で、規則を破った悪いお子様には、お仕置きが必要じゃ」
「なっ!?」


ふっふっ、とこれでもかと悪い顔で、笑うアリーサに、男の子の顔色が変わる。


「ううっ!!ごめんなざぁい!!」


許してー!と泣き叫ぶ子供に、少しやりすぎたかな、と反省しつつ地面に下ろす。
悪かった、と謝ろうとした瞬間、ズドンッと地面が揺れた。


「「え??」」


ガラガラ…!!!


「う、うわぁあああ!!?」
「おお!!?」


揺れたかと思えば、地面に大きな穴が開き、二人は暗闇の中へと落ちて行った。


「くっ…!」
「うわああ!!」


恐怖の色に染まった表情の少年は、心の中で何度も謝っていた。


「(村の言いつけを守らなかったから、バチが当たったんだ!でも、ここに来ないとあれが取れないし…!)」


もう俺はここまでなんだ、と目を強く瞑った。
しかし、そんな少年に、アリーサは手を伸ばし、護るように自分の腕の中へ、閉じ込めた。


「土穏(どおん)…!!」





ずぼんっ!




「え・・・?」


来るはずだった痛い衝撃は、来ず。
その代わり、何やら柔らかい何かが自分を包んでいる。
気付けば、少年は地面に座り込み、アリーサは何やら唱え始めた。


「我が道を照らせ、清らかな光よ」
「わっ、おねーさんて魔どう「少年、下がれ」え…?」


アリーサの魔法に感動していると、異様な空気を察したアリーサに制され、少年はキョトンとする。


《ぐるるる…》


暗闇の中から聞こえる唸り声に、アリーサは少年を背に隠し、拳を構え戦闘体勢に入る。


「ひっ…!?あああ、もももしかして…!!」


《うがぁあああ!!!》


「う、うわぁああ!!!やっぱり猫の化け物だあ!!」



唸り声を上げ、襲いかかってきたそれは、村人を襲っていた猫の怪物だった。
少年はあまりの自体に、悲鳴を上げ震えあがっている。



「我が力の糧となれ!ソイールウルフ!!」


カッと両手が輝きだしたかと思えば、両手にはグローブの様な形が装着されていた。
一般のそれとは違い、岩の様な形をしたグローブだ。


「うぉおおお!!!」


アリーサは、拳を振りかざし怪物へと目がけ、突進する。
怪物も、アリーサに向かって突進してくる。
戦闘を、陰で見守る少年が、息をのみ込む。


「フィスト!!」


振り落とした拳が、化物の顔面へと直撃する。



「いったぁい!!!ぶぇぇぇん!!!」




ボワァン…!





「……は?え?」
「え?」


一瞬、二人は意味が分からず、目が点となった。
モクモクと上がる煙の中から、小さな子供の泣き声がするが、アリーサは訳が分からないまま、首を傾げる。


「お前ー!!この僕に乱暴するなんて、許さないんだからなぁ!!」


煙から出てきたのは、小さな猫。


「…ハッピーの同種か?」


その小さな猫には、天使のような羽が生えていた。
フェアリーテイルにいるハッピーと言う猫によく似ている。
見た目は、見事な赤色だが。


「お前、名は?」
「む?人間!人に名を聞く時は、自分から名乗れ!!」
「お前さんは、猫じゃがな。が、失礼した。私の名は、アリーサじゃ。よろしくな」


てか、自己紹介するんだ!?ぐもーんと絶句する少年だが、成り行きを見守った。


「む…お前なかなか礼儀正しいな」
「そりゃどうも。」
「が、僕の名は………無い!」
「ないんかぃ」


ドヤ顔の猫に、アリーサは苦笑いを漏らす。
この子猫の話を聞くと、六年ほど前に、卵からかえったそうだ。
しかし、生まれた場所が悪かった。
もう遺跡となっているここには、人がいない。
人がいない代わりに、ある種族と暮らしていたそうだ。


「でも君は、人の言葉を喋ってるし、なんだか礼儀正しいね」
「うむ、よくぞ聞いてくれた!ここで、一緒に住んでた方に習ったんだ」
「えー!?すごいねぇ!君、天才なんだね!」


わぁ!と、歓喜の声を上げる少年。
その少年の「天才」と言う言葉に、猫の鼻がぐぐっと伸びていくような、。


「で、猫ちゃん。ここ最近、村人達を襲ったのは、お前さんじゃな」
「う…;」
「どうしてそんな事したんじゃ?」


アリーサの問いかけに、赤い子猫は少し気まずそうに俯いた。


「ここの遺跡には、珍しい薬草があるんだ」
「珍しい、薬草?」
「少年?」
「ねぇ!猫さん!その珍しい薬草って、何処にあるの!?僕に、教えて!!」
「お、おおふっ!?ど、どうしたんだ!?急に!」


途端に、顔色を変えた少年に、子猫は驚いた。
慌てる少年に、アリーサは静かに制す。





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