FAIAY TAIL

□信実を、ぜひ分けておくれ。
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ガタガタと揺れる電車の車内は、とても心地い。
アリーサは目をつむり、その揺れを楽しんでいた。


「しかし、お前が話してくれた大神とは、不思議なものじゃな。あの島の遺跡を、魔法で護っていたとは。」
「ん…この子が、言うにはそうらしいね」


問い掛けるように視線をやった先には、アリーサの膝で大人しく座っていた赤い猫がいた。


「ずっと昔から、彼女は体が弱ってたみたいなんだ。魔法も体力も限界で、半年前に逝ってしまったんだ」
「そうか…それで君は、あの場所を必死に護ってたんだね」
「うん…彼女と暮らした思い出が詰まってるから…」


彼女との日々を思い出したのだろう。
赤い猫の瞳が潤んでいた。


「それに、彼女が護っていたのは遺跡ではなく、大神一族しか使えない薬草を、護っていたんだ。ずっと長く守ってきたあの場所を、欲に駆られた人間達に、見す見す渡したくなくって…」


遺跡はただの住まい。
あの薬草は、あそこの遺跡にしか生えていなかった。
アリーサが長年探していた薬草が、ようやく見つけれたが、遺跡を護っていた大神がもう既に亡くなっていた。


「長く生きた大神か…直接、会って話をしてみたかったな」


赤い猫を育て、あの遺跡に私が来るという予言をした大神。
地上では何も感じなかったが、地下へ落ちた時、とても懐かしいと感じた。


「(あの遺跡には一度も行った覚えもないし、その大神には会った事もないのに…何故だろうか)」


なんて自問自答しても答えは出ない。
いつしか真実にたどり着くだろう。
実際にアリーサが所有する大神一族の狼達も似たような感じだったみたいで、良く分からないらしい。


「そういえば、じいさま。結局あの島の住人達は、違法な事ばかりしてたみたいね」


不機嫌な声色で、鼻提灯を作って寝ていたマカロフに、言葉を投げかける。
赤い猫が、そうだったのか?と首を傾げる。
寝ていたマカロフは、むにゃむにゃと言いながら片目をあけた。



「そうじゃ。本来、禁止魔法を使って儀式をしようとしてたみたいじゃがのう」
「…全然知らなかった」
「それは知らなくて当然だ。君は、遺跡に6年間、住んでて外との関わりが無かったからね」


いくら大神に、言葉や知識などを教えられたとしても、外界に関わりがなければ、なんの情報も入ってこない。


「それに、君が化け猫になって邪魔をしてくれたおかげで、その儀式とやらが成立しなくて助かったよ」


よしよしと頭を撫でれば、赤い猫は照れたような笑みを浮かべた。


「今回の依頼は、老いた父の依頼でもあったんだよね」
「うむ。悪事を働く息子に、心を痛めた父が依頼してきたんじゃ」
「苦渋の決断だったろうね…」


なんとも言えないない悲しさを宿した瞳を、マカロフは流れていく外の景色に目をやる。
重苦しくなった空気に、居た堪れなくなったアリーサは別の話題を振ろうと口を開いた。


「それで?」
「ん?」
「何故、貴方が参加する定例会とやらに参加せんにゃいけんのだ」
「報告も兼ねて、護衛じゃ、護衛。それに、お前に会いたがっとるマスターもおるしな」
「・・・・・・」
「めんどくさいって顔するなっ!」


ぐもー!!と怒るマカロフに、やれやれと思いながら、赤い猫の頭を撫でる。


「バステトも、めんどくさいって思うだろう?定例会」
「ん?ばす、てと?」
「うん」
「誰?」
「君の名前、」
「・・・え?」


ビックリするほどに目を丸くする赤い猫もといバステトに、アリーサは笑った。


「この名前は、ある国の神様の名前からとったんだ」
「神様の?」
「うん。神話に出てくる女神なんだけど、家の守護者といった役割を持ってて、人間を病気や悪霊から守護してくれる女神なんだ」
「なんだか、凄い女神様なんだね」
「君が、あの神殿…つまり家を護っていたから、その名前がふさわしいなって思って。」


だから、バステトって名前にしたんだ。
あんまりセンスはないけれど、とアリーサが苦笑いすれば、バステトはとんでもない!!と首を振った。


「嬉しいよ!!僕、その名前好き!!」


両手を上げ大喜びするバステスを、アリーサ
とマカロフは微笑ましそうに笑った。
定例会の場所へ着くまで、二人と一匹は、談笑しあった。






「あ、ボブさん」


定例会が開かれる会場へ入ると、見知った顔があった。
名を呼ばれたボブという中年の男?が振り返ると、花が咲くような笑顔で、駆け寄ってきた。
バステスは、ボブのなんとも言えない姿に、引きつった顔になり、目を逸らした。


「久しぶりね〜、アリーサちゃん。会うのは、何年ぶりかしらぁ?」
「本当に久しぶり。前に渡した情報は、役に立ってるかな?」
「ええ、もちろんよぉ。それよりも、アリーサちゃん、ジジくさい喋りはやめたの?」
「それは、ただ作ってるだけから、普段喋る訳じゃないよ」
「!!?そうなのか!?」


アリーサの衝撃的な言葉に、だんまりを決め込んでいたバステスは、思わず驚いた声を上げた。
今さらそこ突っ込むんだと思いながら、ボブの興味を引くキッカケになってしまったことを、アリーサは悟った。
それは、可愛いもの好きのボブの雰囲気が、変わったからだ。


「あらぁ?可愛い子猫ちゃんねぇ」
「!!?」
「アリーサちゃんのお友達?」
「ああ、うん。そうだよ。あげないからね、ボブさん」
「え〜?まだ私、何にも言ってないのに、酷いわねぇ」


くすん、と泣くボブを尻目に、お祭り騒ぎのマカロフへと視線をやる。
もう既に、出来上がっているマカロフに、深い溜息を吐く。


「切り替えが早いこって…じい様め」
「切り替えしないと前に進めない…そう言う事じゃないの?」


そういう事をするようなお爺さんかは知らないけれど。
そう言ったバステスに、それはそうかと思いながら、出されていた食事をキュルルと鳴く胃に、放りこむ。


「マカロフちゃん。あんたんトコの魔導師ちゃんは、元気があっていいわぁ〜♡」


これもまた話題好きのボブが、マカロフに話しかけてきた。


「聞いたわよ。どっかの権力者、コテンパンにしちゃったとかぁ」
「おーーっ!!!新入りのルーシィじゃあ!!!あいつはいいぞぉっ!!!特に乳がいいっ!!!」
「きゃ〜〜、エッチ〜〜♡」
「元気があるのはいいが、てめぇんとこは、ちぃとやりすぎなんじゃないかい?」


なんて会話を広げるマスターたち。
アリーサは、ある言葉に驚きを隠せないでいた。


「アリーサ、どうしたの?」
「……いや、なんでもないよ」
「そう?」


頷く代わりに、パンを黙々と食べているバステスの頭を撫でる。


「マカロフ様、アリーサ様。ミラジェーン様から、お手紙が届いてます」
「ん?」


魔導師特有の黒い帽子を被った鳥からの手紙を受け取ったマカロフが、封を開ければミラジェーンの姿が現れた。


「マスター、定例会ごくろう様です。それと、アリーサも。マスターの護衛ごくろう様♪」
「(護衛というよりも、お守じゃろ…)」


ミラの言葉に、心の中で突っ込みを入れ、ビールを一気に飲んだ。


「どうじゃ!!!こ奴が内の看板マン娘じゃ!!!め〜んこ〜い〜じゃろぉ!!!」
「実は、マスターが留守の間、とても素敵な事がありました」
「ほう」
「エルザと、あのナツとグレイが、チームを組んだんです。もちろん、ルーシィとハッピーも。」
「!!!」
「!!(聞き間違いかと思ったが…)」


ダラダラと冷や汗を流すマカロフは、ミラジェーンが話す内容に、パンクしたのかバタンと倒れてしまった。



「じい様、何が起きても仕方ないんじゃないの?」
「お、お前は楽しそうじゃな」
「まぁ後処理するのは、私じゃないしのう?」


私はたんなる護衛だしな、とニヒッと笑うアリーサに、怒りたいやら泣きたいやらで複雑な気持ちなマカロフだった。









「(ルーシィ…君が、フェアリーテイルに入ってるなんて、知らなかったよ…)」



そうか。
君と別れてから、もう数年経つんだね。
成長した君に会える時が、とても楽しみだよ。






END
(アリーサの口調は、管理人が力尽きた為です。ごめんなさい…)

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