GIANT KILLING

□お帰りなさい、マイヒーロー!
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「いってー!!洸、何すんの!?」


久しぶりに会った女の子は、なかなかの怪獣に育ってました。


「理由なんてないので気にしないで下さい」
「いやいや。理由がないと、普通、枕で殴らないでしょ?」
「…まぁ強いて言うなら、有里ちゃんをカンカンに怒らせたバツです」
「ここに引っ越したから?別にいいじゃん。俺の勝手なんだから。」
「その勝手で有里ちゃんが困ってるんですけど…」
「えー?そうなの?」
「そうなんですって。」


ヘラリと笑らえば、深い溜息を吐かれてしまった。
…俺って、なんだかダメ男になってる?


「それよりも、何故ここに?」
「ニヒヒー。それはヒ・ミ・ツ♪」
「……」
「ウソウソ、そんな哀れみの目で見つめないで。洸」


そんな事されたら、おじさん泣いちゃうよ?なんて言えば、洸が「…うーん」と悩み始めた。
真面目な性格からなのか、こんな冗談にもちゃんと考えてくれるのは、昔から変わらない。
そんな所も含めて、可愛いんだけどねー。


「まぁ俺としては、お前が何故ここにいるかっていう疑問があるんだけども。」


――もし嫌なら、喋らなくてもいいから。
驚く洸の顔を、しっかりと見つめる。


「(父親と何かあったのは、確かだな)」


何故だかそこだけは断言できる。


「いいえ、何もありませんよ」
「……そっか」
「はい」


笑ってるけれど、悲しさも含む笑顔に、胸がチクリと痛んだ。
“俺だから喋ってくれる”と淡い気持ちでいたが、さすがに喋ってくれないか。
それぐらい洸にとって、デリケートな部分だって分かった。


「(昔、俺をヒーローと言ってくれた子供が、何かしらの理由で、ここにる。俺の目の前にいる)」


こんな俺を、ヒーローと言ってくれた洸の目には、今でも俺はヒーローとして映ってるだろうか。
好意的じゃないにしろ、十年前にETUを裏切るような行動をとってしまったのだから、もうヒーローとして映ってねぇだろうな。



「達海さんって、昔から変わらないんですね」
「ん?」
「後藤さん達に、イングランドの事を聞いたんです。自由奔放で、王様な性格も昔から変わらないって。」
「あいつらめ…」


監督の俺をなんだと思ってるんだ、と溢せば洸は、クスクスと可愛らしく笑った。
かわいいな、こんちくしょーめ!


「でも、達海さんは、今でも私のヒーローですよ?」
「は、え?」



今なんて?






「もう昔の事だから、達海さんは覚えてないかもしれないけど。」


そう言った彼女の言葉を理解するのに時間がかかってしまった。


「……覚えてるに決まってんじゃん」
「え?」
「中学なりたてのガキンチョが、言ってるの覚えてるよ」
「ガキンチョって言い方はちょっと…てじゃなくて!覚えてたんですか!?」
「うん」
「どうして!?」
「どうしてって言われても…」


あまりの驚きっぷりに、こっちも驚てしまう。


「そりゃ、自分が嬉しいって思った事は覚える主義だよ、俺は。」
「…えへへー!私も嬉しいです!」
「それは、またなんで?」
「達海さんが、覚えててくれてたから、嬉しいんです!」


眩しいぐらいの笑顔に、俺はノックアウトされそうです。






「私は、達海さんに勇気をたくさん貰ったんですから!」



お帰りなさい、マイヒーロー!

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