GIANT KILLING

□怒りの原因
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「よう」



本日の仕事がようやく終わり、荷物をまとめて外へ出ると、男性特有の低い声に呼び止められた。
その声がした方へと視線を向ければ、そこには良く見なれた姿――…


「こんばんわ、政先輩」


兄の後輩である羽田 政志さんがいた。


「洸。今から、時間あるか?」
「…はい、ありますよ」


政先輩の言葉に、少なからず驚いたが、その意図に私は苦笑いを漏らす。
そして、日が傾いて行く街中へと足を進める。






「達海が、帰ってくるって本当か」


私の顔を見るなり、表情を強張らせ、彼から発せられたこの一言に、私は視線を落としてしまった。


「…はい、帰ってきますよ」
「なんで黙ってた」


凄みのある声に、私は体を震わす。
達海さんが、ETUの監督として戻ってくる事を私はこの人に、すぐには言えなかった。
けれど、それとこれとでは違う。


「いつか知る事だと思って、喋りませんでした」


未だに私を捉えるその瞳に、負けじと睨み返すと、政先輩は一瞬、驚くように目を見開く。


「貴方が、達海さんの事を許せない事を分かってます。でも、達海さんが戻ってきてくれる、あの人の力で、ETUが何処まで行けるのかを見てみたい」


それだけ彼のゲームが、心から楽しいと思えるんだ。それだけ譲れない。
そう宣言した私に、先輩は目を丸くしたかと思うと、ふっと薄く笑われてしまった。


「(え!?私なんか変な事言った!?)」
「お前、俺がまだどうこう言ってないのに、強気な発言が出たな」
「うっ…!」
「まぁ、お前の達海に対しての思いは、昔っから知っているからな」


聞き飽きるほどになって言われて、体中が熱くなるの感じた。


「だって、先輩!達海さんの事、すっごく悪く言うじゃないですか!!」
「それはそうだろうが。十年経った今でも、許せねぇんだ、俺は。」
「先輩…」
「逆に俺は、あいつを許せてるお前が不思議でたまらねぇよ」
「……」


ねぇ、先輩。
先輩はそんな事言うけど、私だって最初は信じられなくて、いっぱい泣いたんだよ?
でもね、当時の会長さんの言葉で、私は怒りを感じたの覚えてる。
あの達海さんが、そんな裏切り行為しないって、何故だかそう信じられた。







「だって、達海さんはヒーローですもん」





勇気をたくさんもらった、私のヒーロー。












「そーかよ、悪かったな。お前のヒーローを悪もん扱いしちまってよ」
「子供みたいですよ。それ」
「うるせー」
「痛いっ!頭、小突かないで下さいよ!」








怒りの原因は。
「お?あれって洸じゃねぇか?」
「え?うそ」
「嘘じゃねぇよ。あそこで、男とじゃれて帰ってんぞ」
「っっ!そんなの嘘だ!!」
「杉!?急にどうした!?」

洸ちゃんに、彼氏がいるなんて聞いていないよ!




END...


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