GIANT KILLING

□ある日の日常
1ページ/1ページ





「あ、洸ちゃん」




聞きなれた声に呼ばれて、私は振り返った。
すると、私服姿の杉江さんがいた。


「あれ?杉江さん、もう帰ったんじゃあないんですか?」
「はは、実は財布と携帯忘れちゃって、取りに戻ってきたんだよ」
「!?それ危ないですよ!」


あまりにものんびりした口調で、ビックリ発言したものだから、思わずツッコみを入れてしまった。
それでも杉江さんは、ヘラリと笑い「コンビニでレジに行った時に、気付いて慌てたよ」なんて言う返答に、私は気が抜けてしまった。
何だかこの人、マイペースだなって。
普段は、そんな感じはしないのだけれど、こうやって話をしてるときって、いつもと違う顔が見れて、なんだか新鮮だなぁ。
(普段、黒田さんといるからかな?)
なんて思いを巡らせながら、杉江さんの言葉に、私はふふっと思わず笑ってしまい、杉江さんが一瞬、キョトンとなった。
それを見た私は、焦った。


「あ、いやあのこれはそのッ…忘れ物するの珍しいなって思って思わずでして…!」


あーもー!私何言ってるんだろうかっ!
すっごい挙動不審になってるじゃないですかっ!
絶対へんに思われた。


「ふっ…洸ちゃんって本当に可愛いね」
「え…?可愛い?」
「うん、可愛い。」
「わ、私が、ですか?」
「うん」


笑われたかと思ったら、何故か「可愛い」と言われてしまった。
な、何故?と思っても、ニコニコと微笑ましいとでもいうような笑顔で私を見る杉江さん。
……あ、これ、ヤバいかも。
顔が、熱い。絶対、今、顔が赤い。


「あれ?顔が、赤いよ?もしかして風邪?」
「へ?いやいや大丈夫、ですっ!全然元気ですっ!」
「…そう?」


ときめきました、なんて口が裂けても言えない。
言えるわけがない、恥ずかしくて…。






「(て、杉さん!それ狙ってやったでしょー!!)」


清くんに、そうツッコミを入れられていたなんて知る由もなく、一部始終を見て隠れていたそんな清くんに、声をかける石ちゃん(石浜くんね)にビックリして、悲鳴を上げた清くんの声は、作戦を練っていた監督様におおいに怒られてしまったようで。


「監督、すいません……」


おおいに落ち込んでいた。
しょぼくれる姿に、さすがに怒れなくなった達海さんは「まぁその内思い出すし、いいんじゃね?」と言って、自分の部屋へ戻って行った。


「うう…心臓が痛い」
「大げさだよ、清くん」
「うんうん」
「な!?洸ちゃんも浜も、ヒドい!」
「あははっ」
「杉さん、笑わないで下さいって!」


ギャンギャン騒ぎながら、身支度をする清くん。


「あ、そう言えばさ。前から気になってたんだけど…三人とも年齢、違うよね?」
「はい、そうですけど…それがどうかしましたか?」
「いや、なんだか仲がいいなって思って。洸ちゃんって、あんまり選手をニックネームで呼ばないから、ちょっと気になってさ」


杉江さんの言葉に、清くんと石ちゃんは互いに顔を合わせ、ふと苦笑いを漏らした。


「実は、俺らが入団した頃、洸ちゃん自分らより、年下だと思って、タメ口で話しちゃったんスよ」
「後から、年齢知って謝ったんスけど、気にしてないって言われて、もうそのままの流れで、今に至ってる訳なんですよ」
「丹波さんに「洸は、子供っぽいもんなっ」て、大笑いされましたけどねっ!」
「ごめんって、散々謝ったじゃん」
「二人はいいんだよ。ただ丹波さんに、子供扱いされたのは、なんだか腑に落ちないだけ。」


「「「あー、なんかわかる」」」と声を揃えて笑い出す三人。
すると「いつまで遊んでるんだ。早く帰れ」と、眠たそうな顔で、出てきた達海さんに、私達は慌ててクラブハウスから出た。



ある日の日常
「なぁなぁ、飯どうする?」
「うーん…ラーメンは?」
「それ、前も食べたじゃん。うどん食べに行こうよ」
「えー?腹の足しになんないって、うどん」
「そう??」
「そーだよ」
「(うーん、仲が本当にいいんだな。羨ましすぎるなぁ…)」



「「(うっ…杉さんの殺気が、怖すぎる!)」」



END...
《清川くんと石浜くんは、チームメンバーの中で、ヒロインとご飯一緒に食べに行くほど一番仲がいいんです。》

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ