きみとみる世界

□First contact
2ページ/3ページ


そして、ぐいっとおばさんを立たせ、モンスターボールからチョロネコを出すと、なんとチョロネコの牙をおばさんの首筋にあてがったのだ。

なんてやつら…っ!

「このチョロネコね、とっても牙が鋭いの。
人間の首なんて、すぐに噛みきれちゃうのよぉ?」

「やっ、やめろお!」

おじさんが立ち上がって向かっていこうとしたけれど、他のやつに襟元を引っ張られ、引き戻される。

「おいおい、人の話は最後まで聞けって。」

卑下た笑みを浮かべる男。
女は続ける。

「もしお嬢ちゃんが変な行動をとるようだったら、この女の命はないわよ。
反対に、お嬢ちゃんが私たちのの言うことを大人しく聞いてくれたら、無傷で返してあげる。」

なんてお決まりな。
…でも。

「わかりました。だからその人からチョロネコを離してください。」

私はあっさり要求を飲んだ。
二人がルーナちゃん!? と驚く声がしたけど、ごめんなさい。
二人は私がサンギに引っ越した時から特にお世話になっているんです。
だから…。

「おうおう、理解のいいお嬢ちゃんだなあ、助かるぜ。
じゃあ、そのウォーグル、大人しく俺たちに寄越せ。
あとお嬢ちゃんが持ってるポケモン、全部だ。」

やっぱりそうきたか。
私がオーラから降りないでいると、ほら早くしろよ、と他の連中からも催促がくる。

まったく、なんて馬鹿っぽいやつら。

(オーラ、隙を見ておばさんを助けて。もちろんおじさんも。)

(了解した。ルーナも、必ず我が助けよう。)

言葉には出さずとも、オーラは私の思念をきちんと受け取って、返してくれる。

ありがとう、と呟いて、私はオーラから降りた。

「この子、私の大事な相棒なんです。大切にしてください。」

なんて言って、女の方へとウォーグルを渡す。

「あら、私にくれるの?」

「あなたが一番相応しいと思いまして。」

にっこりと笑って言うと、女も満更でもなさそうに、じゃあ頂くわ とウォーグルのボールを受け取った。

まあ、ウォーグルのボールでも何でもない、未使用のボールなのだが。
たとえ相手を騙すためとはいえ、こいつらの手に相棒たちのボールが一瞬でも渡るなんて、我慢ならない。

「ルーナちゃん…。」

チョロネコに牙をたてられたまま、おばさんが呟く。

「おい、他のやつもだよ!」

言われて、ゆっくりとホルダーのボールに手を伸ばす。
そして私がリュカのボールを手に取ったのを合図に、オーラが動いた。

「ウォウッ」

「きゃあ!」

まず女を爪で押さえつけ、続いて翼でチョロネコを叩き落とす。
あまりに瞬間的な出来事に、完全に動きを止めるこいつら。

ハクリューを繰り出す私。
オーラがおじさんとおばさんを連れて飛んだのを見計らって、指示をする。

「ハクリュー、波乗り。」

すぐそこに流れていた川から、高波が立ち、〈あいつら〉を呑み込んだ。

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

「…ひどい。」

「りゅう!」

トラクターを開けると、そこには様々なポケモンが押し込められていた。

一つのオリにぎゅうぎゅう詰めに押し込まれたポケモン、技で麻痺状態にされ動けないポケモン。
モンスターボールは1つの袋に放り込まれ、無造作に置かれていた。

やがて、オリの1つに一緒に入れられているハーデリアを見つけ出す。

「ハーデリア、ハーデリア!」

ルーナが呼び掛けると、一匹がうっすらと目を開き彼女の姿を見止めた。
そして、力無い声でなく。
どうやら二匹で毒に冒されているらしい。
早くポケモンセンターに連れていかなければ。

「おじさん、おばさん!ハーデリア達見付けたよ!」

「本当かい!?」

二人でぱっと顔を輝かせ、中に入ってくる。
そしてすぐに、二匹が毒状態だと気づいた。

「ボールに直接戻せるか、試してみて。」

「ええ。」

おばさんがボールを二匹に向けると、普通にボールへと収まった。
どうやらボールの妨害波はでていないようでほっとする。

「早く、ハーデリア達をポケモンセンターに連れていってあげて。
私は平気だから。」

「ええ、そうさせてもらうわ。助けてくれてありがとう、ルーナちゃん。」

「ああ、ルーナちゃん。メリープは全員いるから、ぼくたちはもう大丈夫だ。
このポケモンたちは、何処から盗られてきたのかな。」

おじさんが、ポケモン達を元のトレーナーに返すのを手伝ってくれるという。
まずはヒオウギシティへと運ぶと、話をした時だった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ