きみとみる世界

□新しい仲間
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「ありゃー、逃げちゃったね。」

おじさん苦笑い。レッドはどこかしょんぼりとした様子で戻ってきた。
ピカチュウが申し訳なさそうな顔をしている。

「ピカチュウを見るのは初めてだったから、びっくりしたんでしょうね。
でもすぐに戻ってくるわ。」

次はおばさんが指差した先にリオルがいた。
やはり、メリープをじっと見ている。

「………。」

『なんだか似ているわね、ルーナと。』

「ふえっ、」

隣を見ると、おっとりと笑うリュカと目が合った。

「…うん…、そうだね…。」

ルーナには、友だちがいない。
とは言っても、今までに全く居ないわけではなく、それなりの数の友だちに囲まれて、楽しく過ごしたこともあった。
けれども、いつの間にかその友だち達と、離れてしまう。

おそらく、他人に一線を引いてしまう自分の性格故の結果なんだろう。
そう判ってはいるが、この一線は絶対に越えなられない、越えてはいけない。
それは呪縛のようにルーナを縛り付けていたが、ルーナは気付いていなかった。

ただ、たくさんの仲間の中での“ひとり”の感情を、リオルも感じていると思っただけである。

(きっと、あの子は…私と同じ。)

似ているんじゃない、同じなんだ。
そう思ったときには、自然に体が動いていた。
リオルに近付き、ぎゅっと抱きしめる。

「りおっ?!」

当然びっくりして、抜け出そうともがくリオル。
強い力に負けそうになりながら、ルーナはしっかりとリオルを抱えて言い聞かせた。

「リオル、前にあの子達と仲がよかったんだよね?」

リオルの抵抗がぴたりと止む。
目は大きく見開かれ、どうしてわかったの? と訴えかけてきている。

「私とね、同じ顔をしてたから。
仲がよかった子といつの間にか心が離れちゃって、その子は別の友達と、楽しそうに遊んだり、お喋りしてる。
あの子ともう一度仲良くなりたい。
そう思っても、あの子の中にはもう自分の居場所がないって言い聞かせて…。
あの子、ううん、あの子“達”の中に自分が入ったら、仲がいいのが壊れてしまうからって、じっと我慢する心。」

リオルはルーナの言葉にじっと耳を傾けている。
少しだけ、泣いているように見えた。

大丈夫と、ルーナは言う。

「大丈夫、私はあなたを“ひとり”にさせない。“ひとり”をじっと耐えさせるようなことには、絶対しない。

だから、一緒に行こう?」

「り…お…。りおっ!!」

ぎゅうう、とリオルが強く抱き着いてくる。
泣いているリオルを撫でながら、そっと立ち上がった。

「ルーナ。」

「んにゃ…。寂しいなら一緒に行こうって言ったら、泣いちゃったんだ。」

声を掛けてきたレッドに笑って見せる。
おじさんとおばさんは、ルーナちゃんが一緒なら安心ね、と微笑んでくれた。

「め〜。」

一匹のメリープが近くに来て、リオルに一声鳴いた。
リオルは顔を上げてメリープを見る。

「め〜、めー!」

「…っ、りーお!」

きっと、このメリープとかつて仲がよかったのだろう。
メリープはリオルに何かを伝える様に鳴き、リオルはそれに嬉しそうに答える。
すぐにメリープは行ってしまったけれど、リオルは腕の中で嬉しそうだった。

「リオル。」

モンスターボールをリオルの前に差し出す。

「嫌いだったらずっと入ってなくていいから。一回は入らないと、誰かにゲットされちゃう。」

リオルはボールを見て頷き、自分でボタンを押して中へと入った。

「まあ…自分からボールに入る子なんて初めて見たわ。」

「そうですか?みんな大体こんな感じでしたけど…。だよね、リュカ。」

「りゅう。」

言いながら、リオルを出して片手を伸ばす。

「これから、よろしくね、リオル!」

「りお!」


――こうして。 新しい仲間が増えました。――


「あ、メリープ(野生)。」

ごそごそと草むらの中から現れた野生のメリープ。
レッドは寄っていき、ボタンを押しつける。メリープは何の抵抗もせずにボールへと収まった。

「メリープゲット!後でデータ見せてね。」

「リオルと、データ交換。」

「うん。あとクルマユとマメパトもね。」

和気あいあいと今後のデータ交換の話題へと走るルーナ達。
そしておじさんとおばさんは、首を傾げていた。

「今、変わった捕まえ方したわねえ。わざわざボタンが押されなくても、ボールが当たっただけでゲットできちゃうのに。」

「「えっ。」」

それまで談笑していた二人の声と動きが、完全にシンクロした。


(…何かおかしいと思った…。)
(思ってたなら言ってよーっ!!)

 
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