きみとみる世界

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さて、私は晴れてポケモン図鑑を手に入れ、再び旅に出ることになった。

「でも、何処から出発しよう…。」

初めての旅ではないのだし、サンギの周辺から始めるのは何だか味気ない。
しかも、あの辺りのポケモンなら、一部を除いて他を巡っても手に入るはず。

ここ、カノコタウンを出発の地にして、ぐるっと一回りしてから、ヒオウギシティ方面に戻ろうか。

「って思うんだけど、リュカはどう?」

「りゅうりゅ〜う。」

穏やかに笑うリュカ。
つまりこれは了承の返事と取っていいだろう。

「よ〜し、新たな旅にれっつご〜…!?」

リュカと一緒に一番道路に歩き出そうとしたら、いきなり背後から肩を掴まれた。
そして、ぐいっ と引き戻される。
振り向くと至近距離で私を見下ろすレッドさんと目が合って、ちょっとびっくり。

「どうしたんですか?」

そのままの状態で聞いてみると、短く答えが返ってきた。

「…したい。」

え? 死体?
いや、そんなわけないよね。

「ルーナと、したい。」

私と、何を?

「りゅ〜う〜?」

「ぴーかーっ!」

「い、いきなりどうしたの!?ハクリュー。」

レッドさんの言葉に、突然優しくも迫力を持った声で鳴くリュカ。
何故かピカチュウも、レッドさんの肩でトゲのある声で鳴いたが、レッドさんが何を言ったというのだろう。

ポケモン二匹に怒られ(?)、少し目を見開いてからちょっと首を捻るレッドさん。
だが一秒後には あっ、という顔をし、こう言った。

「ごめん、バトルの事。」

「ああ、なるほどです!…でも、何で謝るんですか?」

言葉が足りなかったことくらい、気にしないのに。

「…いや、…忘れて。」

今何か言いたそうな顔してたよね?
でも本人が言う気の無いことを聞き出すつもりはないから、見なかった振りをしよう。

じゃあ忘れますね、と笑顔で返すと、一拍の間の後小さくため息をつかれた。
私、何か呆れられるような事言ったのかな?
なんだか噛み合わないなあ…。

「あっと、バトルするんですよね。
レッドさん、ポケモンはピカチュウと、何匹持ってますか?
もしあと二匹持ってたら、トリプルバトルを教えてあげますよ!」

「トリプルバトル…?」

トリプルバトルは、文字通り三体のポケモンを同時に出してのバトル。
おそらく、カントー地方にはないルールだったはずだ。
イッシュを旅していれば少なからずトリプルバトルを挑んでくるトレーナーはいるが、折角バトルを持ちかけてきてくれたのだし、イッシュ地方オリジナルのバトルで歓迎したい。

けれど、レッドさんは首を横に振った。

「ピカチュウしか持ってない…。」

あう。

「ごめんなさい、配慮が足りませんでした。
じゃあ、1on1でバトルしましょう。」

残念だけど、ポケモンが三体いないのなら仕方ない。

しかし、夢で見たピカチュウを思い出すと、とても侮れる相手ではない。
実際に相手をするとどんなものなのか、とても楽しみでもあるけれど。

「ルーナは、ハクリューの他に何匹いるの?」

「え?あと三匹いますけど。」

「じゃあ、ルーナは全部のポケモン使って。」

「…はい?」

今、レッドさんは何と言ったろうか。

「僕は、ピカチュウだけ」

ピカチュウだけで、私の相棒達とバトルする、って…。

(ああ、でもこの人ならそうだろうな。)

夢では、ピカチュウとは極めて相性が悪いと言えるガブリアスを、ほぼノーダメージで倒していた。
それほどまでに、この人とピカチュウは強い。

今更ながらに這い上がってきた、自分より強い相手と本気でバトルする時のジリジリとした感じに、ルーナは知らず笑みを深める。

「わかりました…。それでは、私たち全員で行きますね!」

ホルダーからモンスターボールを一つ取り、手の中で膨らませる。
レッドさんの肩からピカチュウが飛び降り、私がポケモンを繰り出すのを待っている。

「リュカは、まだ待ってね。」

小さな声で隣のリュカにそう告げると、私はボールを宙へと投げ出した。

 
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