きみとみる世界

□黒の来訪者
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「シャンデラ〜、平気〜?」

「シャル〜ルル〜♪」

サイコキネシスでトラクターを運ぶティアへとそう声をかければ、ご機嫌な声が返ってきた。

ただいま、取り返したポケモン達をヒオウギシティへと護送中。

サンギのポケモンセンターでおじさんと別れてから、そこそこの時間トラクターを持ち上げ続けているティアは、まだ元気一杯のよう。
撫でてあげると、ティアはルーナに甘えるように飛び付いた。最早体当たりだが。

「あいた、もーティ…じゃなくてシャンデラ、体当たりされたら歩けないよ〜?」

「シャル、シャ〜ル〜♪」

「うふふ、よしよし。ヒオウギシティでポケモン返したらかまってあげるから、それまでがんば。」

「シャ〜ル〜♪」

後のご褒美を提示されてルーナから身を離すティア。
再び上機嫌に、体を揺らしながら進み始める。

「…ルーナ。」

「んにゃぁ?なんですかレッドさ…」

「……。」

「あああ、えーと、何レッド?!」

「…いつになったらタメに慣れてくれるの。」

「ごめんなさい。努力してます。」

「…。」

「え、い、今のも…入る、の…?」

「まだ、入る。ルーナが慣れたら、入らない。」

(なんでそんなややこしいの…;)

そして私は、レッドさん相手に敬語を使わない努力をしている。
自分よりも年上だし、バトルも強い。
そんな相手にタメ口だなんて恐れ多い。
決着は私が倒れた事により着かなかったけれど、ピカチュウ一匹にほぼストレート勝ちされるなんて、勝負がついたも同然だ。
バトルの最中は楽しかったけれど、後で冷静に思い返すと落ち込んでしまう。

そういえば目が覚めた時、私は誰かの家に居たっけ…。
金髪のかわいらしい女の子がうなされていたらしい私を心配してくれていた。
でも私は自分の事で頭が一杯になってて、そのまま外へ出たんだ。

確か、ベランダから飛び下りて、レッドさんに支えてもらって…。

「あ、」

何も言わずに、そのままここへ来てしまったんだ。

思い出したら情けなさが止まらない。
助けてもらっておいて、お礼の言葉も一つも無し。
その上私を心配して追いかけてきてくれたレッドさんにもひどいことを言った。

頭を抱えて、丸まりたい衝動に駈られて、深いため息を溢した。
本当にダメだ、私。
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