きみとみる世界
□冷めそうにない熱
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長かった一日。
いや、まだ一日経ってない。
寧ろ半日とちょっとしか経っていなかったが、立て続けに起こった濃ゆい出来事には、ルーナもレッドも疲れてしまった。
というわけで、今日はもうヒオウギシティのポケセンで休んで、明日から旅に出発しようと、そうまとめた筈ではなかったのだろうか。
いや、まとまった筈だ。
「ボルテッカー」
「ペンドラー!」
ピカチュウ必殺、凶悪かつ秀逸であるボルテッカーが決まり、紫の巨体が倒れた。
審判がバッとレッドの方へと旗を掲げる。
「ペンドラー戦闘不能!よって勝者、レッド!」
審判の判定にニヤリと笑うレッド。
ルーナは諦めと妥協を籠めて、小さくため息をこぼしつつ、勝者に拍手を贈る。
ここはタチワキシティ。
イッシュリーグ承認下にはあるものの、バッジは無いジムが存在している。
そしてレッドはそこのジムリーダーにバトルを挑み、見事勝利を手にした訳だ。
だがしかし、これでじゃあヒオウギに戻ろうかとなるほどこのバトル狂者は甘くはなかった。
ジムを出て間髪入れずに言ったことといえば。
「ルーナ、次のジムって、どこ。」
これである。
ただ聞いただけではないということなんて、目を見れば一発だ。
「にゃ、ちょっと待って。
どうしてあたかも当然のように次のジム戦目指してるの?
今日はここだけにして、明日にまわすつもりじゃないの?」
「…次のジム、どこ?」
「ごめん聞いて。
あの、確か今日は休みたいって言ったのはレッド…」
「ジム」
「……。」
そうだ。
レッドが疲れた、と溢したのを聞いて、ルーナが出発は明日にしようと提案したのだ。
レッドはそれに黙って頷き、二人で一部屋ずつ、ポケモンセンターの宿泊施設に部屋を取ったのである。
そして取った部屋へ早々に入り込んでいたのだが、思い出したように(実際思い出したのだろう)ルーナの部屋のドアをノックして一言。
「さっきルーナが言ってたジムに行く。」
かくて、おそらく道案内のためにルーナも同行を求められ、冒頭へ戻る。
こうなったら一種の呪詛のように永遠と、“ジム”を言われ続けるだろうと判断したルーナは、大人しく教える事に決めた。
「ここから船で海を越えた先のヒウンシティ。
カノコタウンからここまで飛んでくる間にビルが建ち並んでる街を見たと思うけど、そこだよ。」
「……あのでっぱり?」
「う、うん…でっぱり…。」
イッシュ随一の大都市をでっぱり呼ばわりするとは。
確かに港が複数あり表現的には間違ってはいないので、否定はできない。
できないが、なんだか釈然としない感じがするのは自分だけだろうかと、ルーナは考えてしまう。
「でも…レッド疲れてたんじゃないの?」
「バトルしたらとれた。」
さすがはバトル狂。
ルーナは思わず苦笑いをこぼす。
「だけど、今日はもう乗せてもらえそうな船がないから、行けるのは明日になってからになるけど…。」
「空でも行ける。」
ルーナの話を聞き、言葉を発すると同時にボールから現れたのは赤いポケモン、リザードン。
レッドの肩で、ピカチュウもその通りだというように元気に鳴いた。
「行こう。」
「え、私も?!」
ぐいっと手を引かれて、半強制的にリザードンに乗せられる。
ルーナの後ろにレッドが乗り、ピカチュウがお腹の前に収まって、準備はいいかと言うようにリザードンがこちらを見た。