きみとみる世界

□新しい仲間
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「メリープ〜〜!!」

「め〜!」

サンギ牧場にやって来て、一番最初にすることは8年前に越してきた時から変わらない。
流石に牧場で育てているポケモンはまるっと変わっているけど。

太陽の光と暖かさを、そのもこもこふわふわの毛に閉じ込めたメリープに思いっきり抱きつく。
毛はフワッとして軽くて、まるでシルクのよう。

「ふわあ〜、メリープ昨日はごめんね〜、あんなやつらに蹴られて痛い思いしたよね〜。」

「めー、め〜!」

「え?助けに来てくれてありがとう、て…。
ふわーん、ありがとう〜!」

「めぇ〜!」

すりすりもこもこもこ。

いつの間にかおじさんが育てているメリープ達がみんな集まってきていて、ここはふわもこパラダイスだ。
時々体毛の静電気がバチバチと走るけど、そんなことは気にならない。

「わんっ」

「あ、ハーデリアも!元気になった?」

「わん、わうんっ!」

「よかった〜!!」

昨日毒に冒されていたハーデリア二匹はすっかり元気になっていて、立派に番犬の役割へ復帰していた。
これでルーナのひとつ目の目的は達成である。

「…ルーナ。」

「にゃ〜、なんでしょ〜?」

もこもこメリープに囲まれて夢見心地でいると、不意に名前を呼ばれた。
そのまま声の方向に振り向くと、カシャ と謎の音がした。

「…今の、何の音?」

一瞬で思考が現実へと引き戻される。
ルーナを呼んだ人物…レッドは片手に持った何かをポケットへしまい込んだ。

「今何か、妙な音しなかった?」

もう一度聞いてみる。
レッドは何も答えないまま、ふいっと川へ視線を移す。

(…? あ、カメラの音か。)

「何撮ったの?見せて〜。」

「…!」

レッドに写真撮影の趣味があるなんて意外だ。
行く先々で撮っているなら、カントー地方の風景もあるかもしれない。
そう思って頼んだのだが、ポケットに手を突っ込んだまま首を横に振るばかりだ。

「ふ〜ん…じゃあ無理には見ないよ。ごめんね。」

残念だなあ、と思いながらも引き下がると、レッドはほっとしたようにポケットから手を出す。
何故か彼のピカチュウが肩の上でジト目をしていたけれど、何も言わないことにした。

「お、ルーナちゃん、いらっしゃい。」

「昨日はよく眠れたかしら?」

おじさんとおばさんが家から出てきた。
バケツと、ブラシと、いつもの仕事道具をもち、元気そうだ。

「こんにちは。ハーデリア達、元気になりましたね!」

「ええ。ルーナちゃんが助けてくれたおかげよ。
本当にありがとう。」

にこりと笑うおばさんとおじさん。プラズマ団に捕らわれていたポケモン達は皆トレーナーの元に戻ったという報告をして、一つのお願いを持ち掛けた。

「あの、ここら辺に生息しているメリープ、ゲットしてもいいですか?」

ハーデリア達の様子を見る、という目的の他に、図鑑を埋めるべくメリープをゲットする、というのがあった。
レッドはカントーの図鑑は全て埋めているが、隣のジョウトからは真っ白なのだ。(ちなみにデータの移し替えはアララギ研究所でやってもらっていた。)

おじさんは二つ返事で了承して、図鑑を埋めるなら、ともう一種類のポケモンの存在を教えてくれた。

「たぶんそろそろ来ると思うんだけど…。
あ、いたいた。」

おじさんが指差す先には、さっきまでいなかった青いポケモンがいた。
ちょこーんと木の影に座り、何か様子を窺うようにメリープ達を見ている。

「なんていうポケモンなのかは知らないんだけど、ここ最近ずっと来ててね。
多分メリープ達と遊びたいんじゃないかな。」

「…リオル、波紋ポケモン。」

いつの間にか図鑑を広げていたレッドが言う。

リオル…名前は聞いたことがあるけれど、見るのは初めてだ。

確か、進化するとルカリオというポケモンになる。
と、すたすたとレッドがリオルの方へ歩いていく。
片手にボールが握られているところを見ると、ゲットする気らしい。

戸惑うリオルの前に屈み、ボールを翳す。
その時、ピカチュウがレッドの肩から顔を出した。

「ぴっかあ!」

「りお!?」

驚き飛びすさるリオル。
急に目が曇り、ピカチュウを見て震えているようだった。

「ぴかぁ?」

ピカチュウ首を傾げると、リオルはすごいスピードで木々の中に消えてしまった。
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