きみとみる世界

□跳開橋上の僕ら
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5番道路、そこはパフォーマーが集まり賑わう道である。
当然、トレーナーもそこそこいる。

「ハクリュー、波乗り!」

「ピカチュウ、ボルテッカーでハクリューの上へ。」

「ぴっか!」

自ら発生させた波の中に入り込んだリュカは、電気を纏ったピカチュウが走るのに合わせてその姿を現す。

ジャンプの拍子に飛び散った滴が、宝石のように美しく輝きリュカを飾る。

再び波に戻ったリュカの背には、ピカチュウ。
まるで波の上に立っているかのような彼を、ギリギリ水に触れさせないようにするのが、最初のリュカの関門だ。

あまりはやくピカチュウを水に浸からせてしまうと、リュカの方が危ないからである。

さて、ここまではいいペース。

でも問題はここから。

一気に地へしなだれ落ちる水の、一瞬のタイミングを見極め指示を出さなくてはいけない。
ルーナもレッドも、ただその一瞬を求めて全神経を集中させる。

波の高さがピークに達し、落ちんとするその瞬間、二人同時に、指示を出す。

「「潜れ」」

水面ギリギリに泳いでいたリュカが沈み、ピカチュウが水中に潜る。
ボルテッカーの電気が水に通され、中はおそらくビリビリ地獄。
水にも電気にも耐性があるハクリューでなければ、多分これで体力の半分は削られる、と思う。

波乗りをくらったレパルダスとチラチーノがビリビリと毛を逆立てているのを見ると、電気のダメージも同時に受けたらしい。
もうこれで戦闘不能に出来るんじゃないかな、とうっすら考えたけれど、タッグパートナーはお構い無しのようで。

「ボルテッカー。」

地に水が着く前に飛び上がっていたハクリューの背から、素晴らしいスピードでピカチュウを突っ込ませるレッド。

だったらこの際、試させてもらおうかと、ルーナもまた指示を出した。

「竜の波動!」

けれど、これはやり過ぎたと気付くのは、いつだって指示を出した後なのである(当然だが)。

しかもリュカが機転を効かせたのか、竜の波動がピカチュウに当たりそのスピードを更に加速させる。
ボルテッカーと竜の波動、二つの技が合わさりその威力を数倍に増幅させたまま、相手のポケモン二匹へと直撃した。

大地を揺るがす大轟音と、アスファルトを破壊してもうもうと上がる土煙。

この煙が晴れた後の光景がありありと想像できる。
また壊しちゃった、とルーナが愕然と呟いた声は、誰にも届かぬまま土埃に消えていった。

「おい、何があったんだ?!」

「すごい土煙だ…! トレーナーは無事か?」

何だ何だと野次馬達が集まるうちに、少しづつ晴れてきた土煙の中を見た人々は更に騒ぎ立てる。
その騒ぎを聞いてまた人が集まり、ねずみ算式に増えていく野次馬へ、ルーナはため息をつきたい気分になった。
それはレッドも同じ気持ちらしく、帽子の鍔をぐっと下げポケットに手を突っ込んでいる。

文字通りルーナたちにフルボッコにされたファンクラブのペアの女の子達は、唖然としたのち大慌てでポケモンセンターに走っていってしまったのでここにはいない。

悪いことしちゃったな、と思いつつ、目の前のクレーターを見る。

『やり過ぎちゃったわね…。とりあえず早く立ち去りましょ、警察が来ると面倒だし。』

「う、うん、そだね。レッド、丁度橋が下がってきたから、ホドモエに行こう?」

「………。」

ライモンシティからホドモエシティに行くためには、跳ね橋を渡らなくちゃいけない。
けれども、貿易の中心地であるホドモエには、定刻になると連絡船が通過する。その間は跳ね橋が上がっていて渡れないのだ。

跳ね橋が下がるまで、と、草むらに入り込んで図鑑埋め作業をしたり、バトルを挑んでくるトレーナーの相手をしていたりするうちに、ふとレッドがこんな提案をしてくれた。

「ピカチュウのボルテッカーとハクリューの波乗りで、合わせ技、できない?」

じゃあ暇だしやってみよう、と思い立ったが即練習。
ちょっとやってみよう程度だった意識がどんどんのめり込み、先程のタッグバトルに繋がるのだ。
ちなみに、さっきのが初めての成功例と言える代物。

「……ホドモエジム、タッグバトルできる?」

「う〜ん…出来ないと思うよ…?」

成功例、と言える代物ではあっても、まだ改良すべき点は多々ある。
降りてきた跳ね橋を渡りながら考えていると、頭上から鳥ポケモンの羽音が聞こえてきた。
ふわりと舞い落ちてきた羽を成り行きでキャッチしたレッドは、空を飛ぶコアルヒー達を見上げる。
手の中にある白い羽と、その落とし主と考えられるコアルヒーの水色の羽をまじまじと見比べているレッドへ近付き、ルーナは手の中の羽を指差した。

「それは、"体力の羽"。インドメタシンやタウリンみたいな効果を発揮する、特殊な羽なの。どうしてコアルヒー達が落とすのかは分からないけど。」

「ぴかぴか!」

ピカチュウが羽に興味を示して、レッドの肩の上から手をちょこちょこと伸ばす。

結果もらった羽に目を輝かせ、レッドから離れてリュカの元へ行き遊ぶピカチュウを微笑ましく見ていると、また一つ羽が落ちてきた。

「あ、知力の羽。」

拾ったところで使わないとは分かっていながらも、ついつい屈んで拾おうとしてしまうあたり、ルーナも大概だ。

そして羽を拾おうとすると、ある一つの事態が起こる可能性をルーナはすっかり忘れていた。


 
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