きみとみる世界

□ネジ山探索
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ネジ山。

イッシュ随一の鉱山であり、鉱物だけでなくポケモンの化石までもが出土する、正に"宝の山"である。

ホドモエシティのジムリーダーであり、交易会社社長のヤーコンが主に発掘にあたっているこの山は、ホドモエ〜フキヨセ間を繋いでおり、旅をするトレーナーの通行も多い。

そして、この山で修行するトレーナーもいたりするわけで…。

「マリルリ、水鉄砲!」

「ジバコイル、マグネットボム」

水鉄砲により吹っ飛ばされたドテッコツが、後ろにいたガントルに背中から激突。
ガントルを狙って繰り出されたマグネットボムは、図らずも二体同時にダメージを与えて、このダブルバトルは僅か数分で終わりを告げた。

戻ってきたマリルリを迎え、ガッツポーズをとったヒビキとルーナはハイタッチ。

「やー、相変わらずタッグバトル上手いっすねルーナちゃんは。いつもこっちに完璧に合わせてくるじゃないすか。」

「そんなことないよ。今のは偶然早く終わっちゃっただけだし、合わせるも何もなかったでしょ。」

「いや〜、分かんないっすよ?あの状態になることを狙って、ドテッコツを誘導してたのかも。」

「にゃ、それはしてないかな…。」

しょげかえるエリートトレーナーコンビを後ろに、話ながら歩いていくルーナとヒビキ。

そして二人の後ろを、無言のままついて歩くレッド。

無言だからといって、いつも通りの無表情だとは思う勿れ。

帽子の鍔の下に隠れた目は据わり、眉間にしわが寄っている。


つまり、相当に不機嫌。

肩のピカチュウも、並々ならぬ主人の様子に耳を下げたままだ。

諸々の事情によりルーナからバッジを貰った後。
特に目新しいポケモンに出会うこともなく草むらを進み、足を踏み入れたネジ山の洞窟では、ルーナはヒビキとばかり話していた。

正確にはヒビキが一方的に話をしていて、ルーナがそれに相槌をうったり反応を返しているだけ、なのだが、さしたる話題も浮かばず喋ることにもイマイチ慣れていないレッドが、彼女の関心を引くことは難しいものでもある。
バトルもすべて持っていかれるわでストレス発散の場もなく、言いようもないモヤモヤを募らせていたのであった。

「そーいや、さっきから宛もなく歩いてるように思うんすけど……迷ったりしてないすよね?」

ネジ山の洞窟は、案外と入り組んでいる。
外に出たり入ったりを繰り返すので、一歩間違えれば方向感覚を失って即迷子になってしまいそうだ。
さっきから宛どもなく歩いているようで不安になったヒビキは、念のためとルーナに問いかけた。
この山には人が多いから、迷ってもまあなんとかなりそうな気もするが。

「大丈夫!ジバコイルがちゃんとナビしてくれてるから。ね?」

「ジ。」

しかしそんな心配は不要だったようだ。
頭の横に浮いているロルを撫でながらルーナは誇らしげに笑い、ロルは小さく頷いた。
続いて差し掛かった分かれ道で、迷わず右へと進む。
程なくして見えてきた光に、ヒビキは感嘆する。

「おおー、ホントに大丈夫だ。」

「…大丈夫じゃなかったら、今頃遭難者。」

ぼそりと、口を開いたのはレッド。だねぇ、とごく普通に返すルーナの横で、ヒビキは驚いて体を震わせていた。

「びっくりした〜…。いきなりボソッて喋らないで下さいっすよ。ボソッて。」

「…ごめん。」

帽子の鍔を下げながら、小さく謝る。
存在を主張するように歩調を早めてルーナの横に並ぶと、唐突にパーカーの袖を引っ張り引き止めた。

「にゅ、どうしたの?…あっ。」

引っ張った理由は、前方の岩の影にある。
レッドが目を向けている方向へルーナもまた意識を向けて、目を丸くした。

ふよふよと、氷の数珠が前を横切っていく。
こちらに気付いていないのか、のんびりとルーナ達の前を横切って曲がり角の先へと消えたのは、ルーナとレッドがつい昨日ホテルで目にしたフリージオだ。
岩影に上からレッド、ヒビキ、ルーナの順に積み重なるように身を乗り出して、ひそひそ話。

「あれ、フリージオ?」

「うん、間違いないよ。」

「っへー、野生のやつ初めて見たっす。
……よーし。」

ヒビキが唇を舐めながらボールを取り出したのと同時に、レッドもまた無言でボールを膨らませる。

「ピカチュウ」

「ソーナンス、頼んだぜ!」

二人同時に岩影から飛び出して、レッドは相棒の名を呼び、ヒビキはソーナンスのボールを投げる。
襲撃者達に気が付いたフリージオは、戦う気がないのか逃げようとする、が、逃げられない。
ソーナンスの特性、かげふみが効いているためだ。

「悪いっすけどレッドさん、フリージオは俺がもらうっす!
ソーナンス、シャドーボール!」

「ピカチュウ、でんじは。」

争うように技を指示。命中したのはでんじはが先で、痺れて動けなくなってしまったフリージオに、シャドーボールが襲いかかる。

「「いけっ!」」

同時に投げ出されたボールが、もうもうと立ち上る土煙の中に消える。
まさか全く同じタイミングでボールを投げられるとは思っていなかったヒビキは、まるでもう一つのボールの存在はないかのように土煙の先を見るレッドに猛抗議だ。

「ちょっ、同時に投げないで下さいっすよ!!どっちがゲットしたか分からなくなるじゃないすか!!」

「じゃんけん」

「恨みっこなしでできるんすかそれ?!」

「ん」

「え…。」

「レッドが勝つから、恨みも何もないってことでしょ?」

「流石。」

「それただの自信過剰じゃないすか!!!」
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