研究所奮闘日記〜仕事より大変なのはちび共です〜

□快晴。久々のおつかい。お土産買っていこう
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「じゃあリンカ君、頼んじゃよ。」

「はーい博士、行ってきまーす。」

「ぴかー。」

朝9時。あたしは旅の時使っていた鞄を持って研究所を出た。オーキド博士に見送られ、ウィンリーを出そうとすると。

「あれ?!リンカお前白衣着てない!!とうとうクビになったのか!」

「あーらー、朝からご挨拶ねえグリーンくん。」

ゴムボールを持ったグリーンくんが、朝っぱらからムカつかせてくれた。
引き吊った笑顔のままそう言うと、あーよかった、と胸を撫で下ろすグリーンくん。

あら、何だ、素直な反応…。

「リンカが居なくなったら、誰にいたずらすりゃーいいんだよ。」

…こいつ。

「リンカいなくなっちゃ、やだ。」

突然右足に温かい感触。
見るとレッドくんが、あたしの足にぎゅっと抱きついていた。
今この子、すっごい殺し文句吐いてきたような…

「リンカいなくなっちゃやだ。」

聞き間違いじゃない!!ああもう、なんだこの子は天使か!
屈んでレッドくんと目線を同じにする。

「大丈夫だよレッドくん。あたしはいなくならないから!」

「…ほんと?」

「うん、今日は博士に頼まれておつかい!遅くとも夕方には戻るからね。」

よかった、とあたしから手を話すレッドくん。
くああ!どこぞの生意気なクソガキとは大違いだわ!

「リンカがいないと、イヅナもいない。やだ。」

「……。」

ああそうですか、つまりだーれもあたしを必要としていないと。
いいわよ別に、博士はあたしを助手として使ってくれてるもん。
ちび二人に必要とされてないくらい、どってことないもんねーだ…。

「ぴいか。」

「ピジョ、ピジョット。」

ああ、イヅナありがとう。イヅナの撫で撫でって安心すんのよね。
ウィンリーも翼で叩いてくれると、なんか心強いんだよね。
慰めてくれてありがとう、相棒達…。

「リンカー、土産頼んだぜ!」

「ふんっ、だーれがあんたみたいなガキに買ってやるもんですか!」

ふんっとそっぽを向く。泣いてない、あたしは泣いてない。
泣きそうなのは認めるけど泣いてない、断じて。

飛びたくてうずうずしているウィンリーに一声かけて、あたしは空へと飛び立った。

〇 〇〇〇〇〇 〇

自由落下、それは僅か数秒で人に限りない恐怖を与える。

「びーかー!!」

イヅナ、怒る。バチバチと電気袋をショートさせて。
視界のすみに影が横切って、あたしはすとんと拾い上げられた。
ああ、目が回るし度重なる落下で頭がぐらぐらする。

「う、ウィンリー…。も、もうちょっと大人しく飛んで…。」

「ピジョォ?ピジョットー!」

「わああああ!!だから飛びながら回転すんのやめてえええ!!!」

本日五度目の自由落下。
イヅナの電気が爆発寸前だ。

あたし、ちゃんとおつかい出来るかな…? 15にもなって、こんなこと思う日が来るとは思わなかった…。

〇〇〇 〇〇〇〇

「つつつ、着いた…。」

「ぴぃか!びかぢゅう!?」

「ピジョー〜?」

「いいよイヅナ、あたしは無事だから。」

ウィンリーにガミガミモードを発動していたイヅナを撫でて、ウィンリーをボールに戻す。
イヅナはぺとっ とあたしの額に手を当てて心配そうに鳴いた。
ああもう、イヅナはホントに優しくていい子っ!
今日は奮発してこの子が一番好きなチーズ買ってあげよ!

タマムシデパートに入り、まずは博士のお使いから。
確か配達員さんがいるって…あ、いたいた。

「すみません、注文していた品を受け取りに来ましたー。」

「はい、お名前は?」

「えー、オーキドです。」

まるであたしがオーキド博士になったみたいでちょっとドキドキ。
渡された小包の宛名を確認して代金を支払い、これで完了!
あとは先輩達からもついでにと色々頼まれてるから、各階へと奔走。
ええっと、カズトさんはインドメタシン、クルミさんはピッピ人形…。
着々と買い揃えて、残るはあたしの買い物。

「ぴかぴか!」

「ん、これ?」

「ぴっか〜!」

イヅナが目をつけたのはカマンベールチーズ。値段は…うおう、やっぱ高い。

「ぴいか?」

あたしの顔を見てか、耳を下げるイヅナ。あたしの財布を心配してくれているらしい。
本当いい子で涙が出そうだ。

「大丈夫だよイヅナ。トレーナーとバトルすれば、すぐにたまっちゃうから!それにイヅナが思ってるほど、懐寒くないのよ〜?」

とおでこを指でぐりぐり。
くすぐったそうに鳴いて、反対の肩に移動した。
あとはいつものチーズと、ウィンリー用のブラシを買って帰るだけだ。

カゴの中にチーズとブラシを放り込んで、レジへと向かう。
けれどもその足はすぐに止まった。

「…イヅナ、あたしさっき買ってあげないっていったけどさ。」

「ぴか。」

「ホントにあげないわけにはいかないよねえ?」

「ぴかぴか!」

ふふふっと笑いを溢して、目の前にあるものを二種類、手にとった。

「じゃ、早く帰ろっか。」

「ぴっか!」

さてさて、二人はどんな顔するかな。


―――――――

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