研究所奮闘日記〜仕事より大変なのはちび共です〜

□晴れ。クッキー上手に焼けました。って、思ったら。
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今日は初めて貰った休日!!
毎日毎日仕事とイタズラに付き合う日々が、ようやく一段落つくわけだ。
研究所の離れの研究員寮で、イヅナと戯れながら久々にクッキーでも焼こうと思い立った。

旅の最中は自炊もしていたし、家に戻ってもあたし一人だったから自分で料理する他なかったから、そこそこの腕は持っているはず。
イヅナに右肘を出して、肩の上に誘導する。

「ぴかぴかぁ?」

「久々にクッキー焼こうとおもってね!買い出し。」

あとは前に先輩から教えて貰ったポケモンフーズの作り方を実践してみよう。
市販のものを買うお金には全く困ってないけど、ポケモンフーズを自作して二匹が喜んでくれるならそれがいい。

寮を出てウィンリーをボールから出す。珍しく元気に鳴いたウィンリーに乗って、タマムシシティまで飛び立った。






「よっし、完璧!!」

「ぴいか!」

クッキングペーパーの上に乗っかったこんがりケーシィ色なショートブレッド達にガッツポーズ。
味も申し分無し、我ながら良い出来だと自画自賛。
いや、イヅナも良くやったと言うように頭をぽふぽふしてくれてるし、実際上手くできてんのよ? あたしが味オンチとかな訳じゃないからね?!

「さてと!冷ましてシナモンとか粉砂糖とかかけたら、差し入れしよー!」

「ぴっかー!!」

ああ、この休日感ってたまらない。





「こんちわー。」

「あら、リンカちゃんこんにちわ。今日はお休みじゃあ?」

研究所に入ると、複数のコーヒーカップを手に歩くクルミさんがいた。
持ってきたクッキーを見せて、差し入れです、と言うと、クルミさんはぱああっと顔を輝かせた。

「きゃあ嬉しい!!丁度博士や皆で休憩しようとしてたの!
ささ、リンカちゃん早く早く!」

ちょっ、クルミさんコーヒー危ないです。
ぐいぐいと押されるままに、談話室へ。そこには本日勤務中の皆さんが全員揃っていた。

「おお、リンカ君。どうしたんじゃ?」

「はい、クッキー焼いたので差し入れに来ました。」

そうバスケットの蓋をあけると、おおっと歓声が上がった。
よかった、持ってくる途中に崩れてない。

「うん、旨いね!甘さ控えめにしてくれたの?」

早速一つを口に放り込んだヒロキさん。いいながら、次から次へと手を伸ばす。

「あっ、ヒロキさん自分ばっかり食べないで下さいよ。」

「クルミさんコーヒーおかわり。」

「早っ!!?」

皆さんどうやら喜んでくれたようで、ほっと一息。
だけども、いつも研究所で遊んでいるあの二人がいない。
大人しく本でも読んでる最中だろうか。
気になったので、オーキド博士に聞いてみた。

「博士、グリーンくんとレッドくんは書斎ですか?」

「いんや?あの二人は今日来とらんよ。」

ふむう、来ていないとな?
てっきりいつも通り研究所内ないし周辺で遊んでるものかと思ってたけど、流石に毎日は来ないということか。

特別にクッキーあげようと個包装して持ってきてたんだけどな。

と、何故か皆さんがあたしを見てくすくすと笑っている。
え、何、あたし何か変!?

「あのー、何か?」

「え?うんん、リンカちゃんの何が変とかって話じゃなくてね。…ふふふっ。」

ちょえっ、クルミさん笑ってないで説明してください。

「リンカちゃん、あの二人はいつもここに来るわけじゃないよ。」

「あ〜ハイ。ですよね!他にも遊び場あるでしょうし!
あたしが知る限り、毎日来てたのでてっきり…」

「そうじゃなくて。」

話が見えない。そうじゃないってどういうことでしょうかカズトさん。
腕を組んで考えるあたしに、ヒロキさんが笑いながら、ドアを指差した。

「リンカちゃんはもう帰りな。僕たちも休憩終わり!!」

コーヒーカップを置いて立ち上がったヒロキさんに続いて、次々と皆も立ち上がる。
ぽかんとするあたしの肩を叩いて、クルミさんがにこっと笑う。

「おいしかったわリンカちゃん。また頂戴ね!」

そう空になったバスケットを返されれば、あたしはもう帰るしかない。
挨拶をして談話室を出て、隣をトコトコと歩いているイヅナに目を向けた。

「ねえイヅナ、さっきのどういう事だと思う?」

「ぴか、ぴかっちゅ。」

え、なんでイヅナまでそんな反応するの。
丁度人間が“さあ、どうだろうな”と言っているかのように、含みのある返事をしてくれる。

知らないのはあたしだけ…っていうこと? うあー、そういうのってなんかモヤモヤする…。

もんもんと考えながら帰り着いた我が家、というか我が屋。
平和なマサラタウンに施錠は必要ない!と二十分前に出たドアを開けた。

もういいや、クッキー食べて忘れよ。
イヅナにこの間買ったカマンベールチーズあげて癒されよ。

がちゃりとリビングの扉を開けた。

「ただいまー、ウィンリーに皆〜。」

「「おかえり〜」」


…………え?


「カギかけねぇでどこ行ってたんだよ。」

「………、…。」

予期せぬ光景に、あたしの手からバスケットが滑り落ちた。
ぼけっと突っ立つあたしの肩に、バタフリーのモコがお帰り、というように止まる。
目が点になるって、正に今のこの状態。

「グリーンくんに…レッドくん…?」

「うん。」

「メタモンじゃ、ない。」

あっけらかんと頷く二人。
床には雑誌が無造作に散らばり、普段はボールに入れたままのポケモン達が遊んでいる。
モコもその一匹。

「何であたしの部屋にいんのよ。」

「暇だったからに決まってんだろ!な、レッド。」

「研究所にリンカ、いなかったから、来た。」

…ヒロキさんは、二人があたしの部屋に来てるということを知ってたんだろうか。
ごく自然に、あたしの部屋でポケモンたちと遊ぶ二人を見ながら考える。

じゃあ、カズトさんの言っていた意味は?
考えるけれど、答えはみつかりそうにない。

「ほい、リンカ。」

グリーンくんに突き出されたのは、家で食べようと思っていたクッキー。
これうまかったーと笑うグリーンくんを見ていると、何だかどうでもよくなってきた。

クッキーを一つつまみ上げ、口に入れる。
そして

「かっ、辛ーーーーー!!!!!」

かつてない程の刺激が舌を焼いた。
七味!七味唐辛子やばいってこれちょっと!!

「レッドペッパー」

得意気に笑うグリーンくんの横には、七味唐辛子のビンを持ったレッドくん。

水を飲むことを一瞬我慢して、二人に耳たぶチョップを食らわせた。


(人の食べ物台無しにすなっ!!)


 

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