短編

□夏色
1ページ/1ページ




夏休みももう終盤に差し掛かり、すっかり秋らしくコオロギが鳴き出した夜。

家でテレビを見ていたら突然ルカから電話があった
用件も言わずただ来いとだけ

ルカ達のところにいってくるっていったらお母さんがスイカを持たせてくれた
これがとても重くてオニューのヒールの高いサンダルをは履いてきたことを後悔した

目標のルカ達の家まで数十メートルまで来て限界だとスイカを置いて深いため息をつくと肩を突然叩かれた




「よう、来たか」


「コウ!久しぶり!
…ってなにその荷物」



両手にはスーパーの袋をぶら下げて楽しそうに笑う久しぶりに見たコウの姿

なんか焼けたしまた逞しくなった気がする



「あとでわかんべ
つーかなんだそれ」


「これ?お母さんが持たせてくれたスイカ!」


「おっ、いいじゃねぇか
オマエこれ持て、オラ」



差し出された物を持つと軽い荷物
中を見ると沢山の手持ち花火

変わりにコウがなにも言わずにスイカを持ってくれた
軽々しく持つコウの姿をみて男の子なんだなと当たり前のことを想って思わず見とれた



「なにしてんだ行くぞ」



月明かりに照らされてコウが笑ってる

わたしは慌ててコウの隣を歩いてウエストビーチへ向かった





***




「おせーよふたりとも」



バケツをビーチに置いて笑うルカ

うるせぇと一言言ってルカにスーパーの袋を手渡す



「ねぇコウ、なにそのスイカ」


「もらった名前の親から」


「え?まじで?サンキュー」




ぎゅっと抱き締められてルカの香水の匂いが香る

コウはため息をついてウエストビーチに入っていった
コウがいなくなったのを見てルカが花火を開けてわたしに一本差し出した



「はい、名前やろう?」


「あ、お金返す…」



「いいよ、俺ら夏休み遊べなかったし
お陰で俺らスゲー給料貰ったからさ

夏らしいことやってねーし
ムサイ男ふたりでやるくらいなら華あったほうがいいだろ?」



な?と笑うルカが可笑しくてわたしも思わず笑った

コウもスイカを切ってくれていたらしくスイカをいっぱい皿に並べて戻ってきた



「オイ、さっさとやんぞ」


「ほら、コウもいってるし」



ね?と差し出された花火を受け取ってルカが火をつけてくれた気づけば今年初めての手持ち花火だなぁと思わず花火にみとれた

暫くたって砂浜に足をとられてすっかり疲れてしまった足を癒したくて砂浜に座った

その隣にコウも座って深いため息をついてルカをみている



「元気だよなぁ…」


「そうだね」



まだまだ元気が溢れてると言わんばかりに両手に花火をいっぱいもってはしゃいでる

とっても楽しそうなルカにかわいいなぁと微笑む



「ガキみてぇだな」


「…そうだねぇ
じゃあわたしたちは夫婦?」



冗談で言ってコウを見たら顔を真っ赤にして片手で顔を隠している

いってるこっちも恥ずかしくなってきた




「…悪くねぇ…」


「…え?」



「悪くねぇっていったんだよ
オマエとなら」




まだまだ真っ赤な顔に目は真剣だった

妙に心臓が煩い。ふいに手が触れてコウの大きな手で包まれた
反射的に身体がびくっと反応した 顔が熱い

近づいてきたコウに目を強く瞑った
震える身体を大丈夫だと安心させるようにコウの手はあったかくて落ち着いた


目を瞑った後、聞こえたのは花火の音
慌てて目を開くとコウはすっかり離れてて目線の先には口を尖らせたルカがなにか持ってる



「あぶねぇんだよバカルカ!
花火は人に向けんなって常識だろうが!!
それにそれロケット花火じゃねぇか!」


「俺がみてない間になにしてんの?
抜け駆けずりーよ」


「バカ!当たったらどうすんだ!」


「チューされるほうが大問題」





ロケット花火の残骸をバケツに放り投げて近づいてくるルカ

目の前で立ち止まってわたしの頬に手が触れる




「わり、当たんなかった?」


「うん、大丈夫」




心配そうな顔が安心した顔に変わってわたしも微笑んだ

安心しきっていた私に唇にあったかい感触が伝わって頭が真っ白になった


理解したのは数秒後。
コウの叫び声で我に返った




「てめ、バカルカァァァァァァァァァア!!!!!!!
なにしてんだ!!!!!!!」


「なにって、狼避け?」


「アホみてぇなこといってんじゃねぇよ!
なにしてんだ!」


「コウだってしようとしてたじゃん
仕返し?」




ニヤッと私に笑いかける

わたしは呆然と座ってることしかできなくて
喧嘩してるふたりを見てたらおかしくなってなんだかまた笑えてきた




               夏色
         ((  夏最後の最高の思い出  ))

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ