短編

□貴方のHERO
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『お前のそのピンク色の髪気に入らないんだよ!!』



そんな時もあった。
どんなに虐められても俺らが気づかなかったらいつでも笑ってるんだ
ぼろぼろの服に傷だらけの身体で。

そしてまた感じる、守れなかった




だからなるべくそばにいた


あの日も同じだったよな



『お前なんかだいっきらいだ!!』



いじめっ子と噂されていた男が名前を囲むようにいじめる


買ってもらったお気に入りのヒーロー物の仮面被って何度も彼女を助けたっけ




『ヒーローブラック!
助けにきたぞ!名前!!』


そんなことを言って何度も助けたっけ
いまでも思い出すんだ
なぁ、女々しいだろ?


時は流れて、一度は失った光もいまはそばにある




高校3年の文化祭。

主役を勤め終わった俺は出店を一人でまわっていた




こんな日でこそ、あいつのそばにいたかった

しょうがない、探すかと心に決めて歩きだした



廊下ですれ違った男どもがなにやら騒がしい


皆が裏庭に向かって走っていた





「やばいってミヨ!」


「落ち着いてカレン、
まだバンビは無事」




バンビと言う言葉を聞いて思わず固まった



「名前がどうかしたのか」


「琥一君じゃない!
いいところに…

実はバンビがいま追われてるのよ学校中の男に!!」



どういうことだよ。と思わず聞き返す

俺の肩を掴んだ花椿がはぁ!?と声を荒げた



「知らないの!?
バンビ、今年のローズクイーンに選ばれたの!

ローズクイーンなんてなった日には男の注目の的なんだから!」



「…嘘だろ

どこにいるんだ」



「恐らく外

わたし大事にならないように先生呼んでくるから

バンビに怪我させたらアンタ…ぶっ殺すわよ」





ものすごい怖い顔で宣言された
言われなくても怪我なんてさせるかよ


昔からあいつは弱くて、一人で泣いてた

の癖、よくわからないところで強い。
たぶん、誰よりも

力とかだったらめちゃくちゃ弱いくせに

言葉に表せない強さがある
でも、俺が守らなくちゃいけないんだ
理由なんて昔から変わらない。ひとつだ。大好きだから愛してたから、彼女を守りたいと思った




息切れしながら裏庭に向かうと男どもで溢れかえっていた




自分がでかいおかげか見えるのはピンク色の髪。

息を整えてゆっくりとその群れへと歩く




後ろからゆっくり近寄ると後ろにいた奴らが俺を見て思わず一歩下がった



「桜井…琥一…」



誰かがそう呟くと彼女への道ができたように俺の目の前はいっきに人が消えた


気づいた彼女はわたしをみて安心した顔をみせた

どいてくれた道をまたゆっくりと歩くと彼女の横で立ち止まる




「ブラック見参
お前は俺が守るから」



照れくさそうに笑うとうんっ!と笑ってくれた



「お前らには絶対渡さねぇ
こいつは昔から守ってきたおれの大切な女なんだよ」




拳を思いっきり壁を叩く。
ヒビが入ったブロックからはボロボロと砂がこぼれていた




「手ぇだしたらどうなるかわかってんだろうな」











****








「へぇ、そんなことがあったんだ
コウ、誘ってくれれば良かったのに」



「かっこよかったよ!コウ!」



「見たかった。久々のブラックの姿」



「うるせぇんだよさっきから飯食えオマエら」





ニヤニヤする二人の目線をそらす

まったく、好き勝手いってくれやがって



軽く溜め息をつくと紙パックのお茶をすすった



ルカと名前は相変わらず2週間前の話に花を咲かせていた




「だからコウ、反省文なんて書かされてたんだ」


「器物破損。
めちゃくちゃ怒られてたよ」




ほどほどにしないととまたからかうからうるせぇ以外なにも言えなかった

確かに、あのときはどうかしてた


別に壊さなくてもやり方は色々あったはずなのに
どうしてあんなことしたのかいまでもわからない





でも







お陰さまで彼女に近寄る男は消えていった


その話が持ちきりとなりいろんな人へと周ってくれたおかげで彼女はまた笑ってくれてるんだ






「そういえばコウ、なんであのときブラック見参なんていったの?」




りんごジュースを飲みながら聞いてくる無邪気な名前の頭をガシガシして教えねぇと優しく笑った








しょうがないんだよ、

あのときはまるであのときのように泣いているように見えたから


助けてって顔をしていたから


気づいたらそういってたんだ








         貴方のHERO。
 

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