短編

□確信犯。
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空が夕暮れから夜へと変わる時間。

夕日は沈んでしまいそうだった



「綺麗…」




思わず呟いた

夕暮れの校舎。残っているのはわたしとあと入学して半年たったのに一度も話したことない不二山嵐のふたりだけ。


普通はロマンチックな幻想を描くだろう

だけど、わたしたちはただクラスのひとりというだけで関係は変わることのない二人なんだ


それを大きく示す理由は例えばいまでも彼はわたしを見向きもせずただ日誌を夢中で書いてることもいい例えだ思う



そう、残ってる理由は日誌を提出するため。

普通は日誌ノートなんてものを用意してくれるのが普通だと思うのだが、大迫先生は『青春だぁ!』なんてまったく理由にならないこと言い出して大学ノートを用意してきた


ひとり1ページ。
日誌はふたりで書くのが原則だから余裕で両面埋まる


最初は嫌がっていたものの大迫先生を気に入ってるからか素直に言うことを聞いて書いている

ちなみに私は授業中にかいてしまった


帰っても構わないのだろうけど特に帰る理由がみつからなくてここに残っていた



いま夢中になっている紺野先輩に貸してもらったミステリー小説を読みながら。

電気つけてあげるか。とスイッチを押しにいったら嵐くんがやっと言葉を発した




「どーも」



思わずびっくりしてうん、と少し裏返って自分の席に戻った




「オマエってさ、字うまいしノート見やすいよな」




そう?と聞き返しながらページをめくる。

素直で天然な生き物とは聞いていたが直球すぎてこれは女の子にモテるなぁとひとり感心してしまった




「だから勉強できんのか。すげぇ」



私が隣に書いたノートを眺める不二山くん。

なんだこれ、妙に恥ずかしい

小説を閉じて彼のもとへと歩くと私の書いたノートに小説を被せた




「…恥ずかしいって」




結構真剣に言ったつもりだったのだが彼には通じなかったらしい

わたしが怯むような真剣な目で私の腕を掴んだ




「お前さ、部活は?」


「部活?

…………………………………テニス部?」



「嘘つけ」



なんでばれたんだよ

溜め息ついて嵐くんの前の席の椅子に座った




「なんでもいいでしょ?
別に、嵐くんには関係ないし」




我ながらかわいくねー。

目線をそらすように別の方向を見つめてると嵐くんはあると言い切った


なにいってんのこいつ。
なんて嵐くんをみたら本気な顔してて思わず目をみてしまった

……………綺麗な目。




「お前のこと気に入った。
だからマネージャーになれ」



「嫌だ。
向いてないしめんどうだし
しかも理由がないでしょ」


「理由ならある
オマエには素質がある!
それをこのあと根こそぎ奪われたら俺は柔道できねぇ

オマエじゃないと駄目なんだ



それに………」









「オマエを見たとき、すっげぇドキドキしたんだ
だからオマエは柔道部に入る運命だったんだよ」




意味のわからない理屈。

誰が勘違いしてもしょうがない



完全に告白だとおもった私は自意識過剰なんでしょうか?


うるせぇよばーか。
と言い残して、わたしは荷物をもって教室を出た




次の日、嵐の机の上に新入部員希望者の紙が置かれていたという









          確信犯。
       ((  完全に確信犯だろ、こいつ  ))

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