短編

□君は僕の初めての理解者
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おかしい。おかしい。おかしい。おかしい。おかしい。


羽ばたき市のナンパの達人と言われた俺が
なによりも女の子を口説くの得意な俺が

恋をするわけないって!


思い出すのは彼女のことばかりで頭を抱える



「あーーー!もーーー!」



廊下で叫んだせいか周りは変な目で俺をみる

始まりは彼女を昨日のデート。
一緒に動物園のデートでわんにゃんハウスにいった
無邪気に近寄る小さな動物達に俺はなでなでしたい理性を押さえた


あくまでもカッコよく。
落ち着いてる俺をみせたかった

彼女はお手洗いに行くと俺に告げてトイレへと向かっていった
一人になった俺は自分の気持ちは押さえきれなくて少しなら…と無邪気に擦りよる小動物に甘えた声を出した


「かわいいにゃぁー
よしよーし」


夢中で撫でてると「新名くん?」と名前を呼ばれた
恐る恐る振り替えるときょとんと俺を見てる彼女



驚いて顔を真っ赤にて、違う!と立ち上がる
最悪だ、こんな姿見せたくなかったのに

なんとか弁解しようと頭をフル回転したのに答えはみつからない

あーぁ、カッコ悪ぃ…絶対ひかれたよ


そしたら彼女は意外にも笑って



「よかった、新名くんも好きだったんだ!
つまんないのかと思って心配しちゃった!」



「…え?」



「ほら、かわいい?」



子猫を持ち上げて抱き締めて首を傾げる

なにそれ、反則だって!

かわいい、とおもいっきり撫で撫でしたり、スリスリしたり夢中で構っていたら彼女はにこっと笑って俺の頭を撫でた



「これが本当の新名くん?
素敵だね、そっちのがいいよ
だから背伸びなんてしないでよ、寂しいじゃん」




こんなこと言われたのは初めてだったんだ

背伸びするに決まってるだろ
ガキなんて思われたくない

好きなひとには尚更。


でも、その言葉がたまらなくうれしくてありがとうと笑った






そんなことが昨日あってから彼女が頭から離れない


参ったな…。

こんなに夢中になるとは思わなかったんだ
でも普通の女にはもってないものをあの人は持ってる

俺が探し続けたものがあのひとにはある




「あっ、旬平みっけー♪」




チャラチャラした一個上の先輩が俺を囲む

あぁ、この間俺が声かけた先輩たちだ
声をかけたら意外にも脈ありの反応で、あのときは俺もモテモテのひとりじゃん!だなんて舞い上がってたのに全然嬉しくなくてベタベタ俺を触るその手が嫌で嫌でたまらない。



「ご飯食べよ?おねーさん作ってきたんだよ?」


「あー…ごめん、先約いるから
すみません」


「えー、新名くんの為に頑張ったのにぃ?」



早くここから離してよ

いろんなひとのキツい香水の臭いが混ざって嫌な匂いがする
はやく離れたい
シャンプーの匂いのする彼女のもとに



「急いでるから、すんません」


「あっ!ちょっと!」



隙をみて走り出した
向かう先は二年生の教室

あいつに会ったら何て言おう
なんにも用事なんてない、こんなで会ったらなにか言われるかな

迷いが混じって立ち止まる

やっぱり、教室戻ろ


Uターンしようとしたとき、聞き慣れた声で名前を呼ばれた


ゆっくり振り替えると手を振ってくる愛しい彼女




「ねぇ、新名くん
お弁当、一緒に食べない?
実は今日はやく起きすぎて作りすぎちゃったんだよね

いま新名くんの教室いこうとしてたの
あえてよかったぁ…」



手のなかにあるお弁当をじっと見つめてたら涙が出そうになった

なんだよ、これ
なんで泣きそうなんだ?


わからないけど
会いたいという気持ちが一緒だったこと
彼女の手作りという嬉しさ
彼女の頭のなかに俺がいたことが嬉しかったんだ




「新名くん?」



顔を覗く、愛しいひとの顔

思わず引き寄せて抱き締めたかったけどまだはやいよな
彼女の手を握りしめて精一杯笑う

いや、自然とでた笑みが精一杯の笑顔だった



「すっげぇ嬉しい!あんがと!

ねぇ、はやく食べよ?」



手を引っ張ってはやくはやく!と急かす

こんな子供っぽい俺でも彼女は嫌な顔せず笑ってくれた


ほしいものって、俺の全部受け止めてくれるひとだったのかもしれない
こんなにも安心して愛しいのは初めてだよ



だから簡単に告白はできないから
先輩が卒業するまでどうか誰のものにもならないでよね?






            君は僕の初めての理解者

          ((  ありがとうと言いたい愛してると言いたい  ))

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