短編

□男は胃袋
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僕にも青春の文字がくるとは思わなかったんだ


「なぁ、紺野ー、お前なんか変わったよな」


「あーー!わかる
なんかいい意味で変わった!」



クラスの友達にそう言われた

そうかな?と聞き返すと会話はどんどん進む



「あれだよな!一個したの彼女
たぶん、あの子で変わったよなお前」



でてきたのは名前の名前。

胸がドクンッと跳ねた
彼女の笑顔が頭に浮かぶとどうにも息苦しくなる
こんな感情、初めてだったんだ

真っ赤な顔を両手で隠してゆっくり溜め息をつく


まだ心臓がうるさい




「うわっ、紺野、耳まで真っ赤じゃねーか
照れるなよー」


「うるさいなぁ」




思わず振り返って目に入ったのは教室のドアでキョロキョロしてる名前の姿。

真っ白になってただ見つめた

なんで、あの子がここにいるんだ?
俺と目があって、逸らしたくなるのを我慢して軽く会釈したら彼女は笑って手招きしてくれた




「紺野先輩!」



「え?、僕?」




立ち上がって彼女の元に行くとクラスの連中に茶化された。
もう一度うるさい。と笑って彼女の手を引いて屋上へとめざした





***





「びっくりしたよ、君が教室にいるんだもん」


「えへへ、
前言ってたCD持ってきたんです」




紙袋から取り出したのは彼女がお勧めだと推していた
あまり人気ではない歌手のアルバム

この間、デートのとき待ち合わせに遅れてしまって待っていた際、彼女が音楽を聴いててなにを聴いているのか聞いたらこれだった

すっかり聞き入ってしまって今度貸してくれと言ったのを思い出した



「そうか、ありがとう」



受けとる際、手が微かに触れて思わず手を話してしまった
紙袋にはいっていたCDが自分の膝のうえに乗る



「わぁぁっ、ごめん、
…傷つかなくてよかった」


「大丈夫ですよ
傷ついても」


「だめだよ、大切なものなんだろう?」



とりあえず、ごめんな。
と頭を優しく撫でるとはいっと笑った




「紺野先輩!お昼食べましょ!」




いっぱいに広げたのは色とりどりの可愛いお弁当

思わずわぁっと感激の声を漏らした




「君がつくったのかい?」


「はいっ!
だから味の保証はできないですけど…」



「全然構わないさ
おいしそう…いいお嫁さんになれるね」





…………………………………………。

彼女の目は見開いてその場が沈黙に包まれる
あれ?そんなに変なこといったか?
と考えてみる『いいお嫁さんになれるね』

その言葉を思い出して顔を真っ赤にした



「ち、ちがっ…「…じゃあ、もっと頑張ります…」…え?」




照れくさそうにえへへと可愛い笑顔




「もっと頑張って紺野先輩の胃袋つかんじゃいますね?
がんばろー!」




…なんでこの子はこんなに可愛いことをいうのだろう

僕も思わず笑って頑張れと頭をさっきより強く撫でた


愛しくて、大切なひと


もう、君には勝てる気がしない
君へのこのときめきに勝てる気がしない




二人で弁当を食べたお昼休みのお話







           男は胃袋

        ((  もうすでにうますぎる俺のお嫁さん  ))

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