短編

□いちごみるく。味
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「流夏くんおはよぉー」


「もう授業終わっちゃったよー?」



幸せな夢をみた。
愛しいひとがホットケーキを作っておはようと笑ってくれる夢
でも現実は起きると彼女の姿は近くになかった


夢にしては現実すぎる甘いにおいがした

囲む女の子のなかでひとりだけふわっと香ってきた甘いにおい
引き寄せると首筋の匂いを嗅いだ


「…これだ」




離すとその彼女は顔を真っ赤にして俺から離れた

それとほとんど同時に頭を殴られる




「いった。なにコウ」


「なにじゃねぇよなにしてんだテメェ」




きゃあきゃあと騒ぐ周りの女の子が煩くてうまく聞こえない

立ち上がってコウを避けて廊下へと向かう




「どこいくんだ」


「名前のところー?」


「…ハイハイ」




本当は自分も行きたい癖にカッコつけんなオニーチャン


横目でコウを見るけど後ろ向いててよく顔が見えない
隣の教室に行って扉が開いてて名前を見つけた

まーた不二山と話してる


ズガズガ上がり込むと机に手をつく
手につけたアクセサリーがガチッと嫌な音がした

なんでこんなことしてんだろ
嫉妬?俺だってさっき似たようなことしたのに


次の言葉が見つからない
ふたりはきょとんと固まってる

名前と俺が心配だったらしく扉から素直じゃないばかでかい図体がみえる
さっきまでかっこよつけてたくせに


でもいいタイミングとにっこり笑ってコウに指差した




「 コウが柔道部入部したいって」


「はぁぁぁぁぁぁ!!!!?」


「本当か!琥一!!」



立ち上がるなりコウをおっかける

きょとんと不二山がでていった扉を見つめると俺にでこぴんした



「だめでしょ、流夏
嘘ついちゃ」


「あれ、バレバレ?」



あははと笑うと名前は困った顔をした

そんな顔するなよ
オマエは誰が好きなの?
コウ?不二山?この間、後輩のニーナにもいい顔してたし会長にも笑ってた せいちゃんにも…

そして俺にもお弁当くれたりしたよね


壊したい気持ちと気が引けるこの気持ちがごちゃごちゃしてキモチワルイ





「もうだめだよ?
つぎやったらホットケーキつくってあげないよ?」




悪魔みたいに笑う

なんで夢の内容を知ってるの?
たまたま?それとも

偶然?





「じゃあ、今度ウエストビーチきてね?

ちょっとコウ可哀想だから助けてくる!
ヒーローだからね」




立ち上がってピースして笑う

また来るよ、必ず
だって君は目を離したらその小悪魔みたいな囁きだれにでもするだろ?

そのときは俺が止めるよ
俺が守るよ


君だけの不死身のヒーローだから



教室から出ようとしたら声をかけられた





「優しい流夏好きだよ
はい、頑張ってね?」




手にのせられたふたつのいちごみるくの飴ちゃん

笑ってる顔は夢とまったく同じまんべんな笑み



俺も笑って手を振って教室をでた


好きとかずるい。そんなこと言ったらおれ頑張っちゃうじゃん。


鼻歌混じりにコウがいるもとへと向かった





           いちごみるく。味

        ((  まるでこれじゃ、姫と家来だ  ))

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