短編

□ソラノイロ。
1ページ/1ページ




なぁ、ヒーローってなんだと思う?

人の英雄だったり偉人だったりその小説の主人公だったりするんだといつだかみた本には書いてあった


なぁ、ヒーローってなんだと思う?
例えばいま、ここで守りたいものを守れない俺はヒーローにふさわしくないんじゃないかって思うんだ



3年生になって隣の席になった子に恋をした

彼女は笑顔がたえないこ
いつでも笑って、誰にでも優しい

そんな彼女に恋をしたんだ


甘いものが足りなくて落ち込んでたとき俺の机に飴ちゃんをひとつおいてったのがすべての始まり

だんだん話すようになって仲もよくなってった

恋をすればいつでも探してしまう、見てしまう


でも、いつも決まってみえるのは愛されてるかさえどうかわからない傷だらけの身体と俺のものに触るなといわんばかりにつけられた複数のキスマーク

彼女にはもう男がいた。




夕暮れの教室、

彼女は、勉強をしていた
ノートを開いて解いていく沢山の問題


そんな彼女をおれは暇そうに眺めた




「真面目なんだね」


「そうでもないよ
わからなくて困るの自分だもん」




ふわりと笑う彼女に胸があつくなる


首筋から見える痕に優しく触った



「…キスマーク」



ビクッと身体が跳ねる
あ、あのっ、と口が籠る

オマエは一体どんな男につきとまわれているんだ?

愛せる自信はあった
彼女を守れる自信もあった



「俺さ、お前の為ならヒーローになるよ」



そういったら彼女は、驚いた顔をした
でもすぐに無表情になる



「無理だよ。やめて」


「無理じゃない」


「無理なの!」




いままで笑ってた彼女が声を張り上げる

もういい加減にして
大丈夫だから

と消えそうな声でそう呟いた



「じゃあさ、泣かないで?

もう一度言うよ
俺、お前の為ならヒーローになる

お前が好きだから」



俺をみてそっと涙を溢した

俺はヒーローなんかじゃないよ
だってヒーローって英雄、偉人、主人公なんだろ?

ならヒーローなんかじゃない


世界を平和にしたり
人々を守ったり

そんな柄じゃないんだ、俺なんて

俺も命が惜しいんだよ

だって死んだら君が笑ったり泣いたり喜んだり悲しんだりする姿を身近で見れないだろ?

抱き締めたりキスしたりそれ以上のことも出来なくなるなんてそんなの嫌なんだ
希望は捨てたくない




でも君が俺以外の男で苦しんでる姿をみるのはもっと嫌なんだ


ヒーローになりたい
君にとって特別な、君だけのヒーローに





「…流夏君…助けて…」


「うん、任せて

でもさ、助けるまえに聞かせて?
俺のことどう思う?」



「わたしだけのだいすきなヒーローだよ」


「…いいね、
ルカレンジャー頑張っちゃう」




また意地悪みたいな笑顔を浮かべた


ふいに携帯が鳴る
校門の前に止まった外車の一台の車




「…あれ?」




震える彼女が肯定の意味を示した

上着を彼女に羽織らせて俺は車の元へと向かった






            ソラノイロ。
         ((  なぁ、もし俺があいつに勝ったらたっくさんキスしよう?  ))

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ