短編

□主人公と通行人が出会ったワケ
1ページ/1ページ




僕たちは本当は入学式から出会っていたんだ

そして僕は一目惚れをした
彼女は高嶺の花と呼ばれるのにふさわしい人物

入学式から桜井兄弟に好かれて
同じクラスの柔道部のイケメン、不二山に好かれ
ひとつ下のはばたき市のナンパ達人と呼ばれる新名に好かれ
生徒会長の紺野先輩に好かれ
あの人気のお金持ちピアニスト設楽先輩に好かれる

本物の高嶺の花



彼女は俺をみたことある?

沢山のイケメンが彼女を取り囲み毎日のように取り合っている

こんな普通のなかの普通が彼女に近寄れるわけなんてないんだ




お昼休み、俺はご飯を食べようかとお弁当を広げた


珍しく教室に名前ちゃんがいてドキドキしながら



毎朝作ってくれるお母さんのお弁当に感謝しようとご飯を食べようとしたとき同じクラスの花椿が大声をだす




「えっ、お箸忘れたの!?」




その声ははっきりと俺の耳にも届いた

ちらっと様子を見れば俯く彼女




「別にいいんだよ!?
そこまでお腹すいてるわけじゃないし」


「食べないと思った
バンビ、無理しちゃダメ」


「そうよ!なら購買いきましょ?
あそこならお箸くれるって!」


「いや、本当に平気…」




苦笑いを浮かべて明らかに困ってる

すっかり箸が止まった俺は彼女をじっと見つめた


なにか助けられないか
小さな希望をバックに込めてバックを探した


見つかったのはひとつの割りばし

そういえば昨日、カップラーメン買ったとき店員さんがつけてくれたんだっけ
それでいらないと思ってバックにいれたのをはっきりと思い出した




胸が高鳴る

彼女に渡したい

だってそうすればこんな俺だって青春捨てたもんじゃないはずだ


いまは奇跡的に桜井兄弟も不二山も教室にいない

チャンスだ、と割りばしを握りしめて立ち上がった




「ごめん、ちょっと…」


「あっ、おい
…まさか平のヤツ…」


「やるなぁ…」




微かな友達の声が聞こえたけど聞こえないフリをした


彼女のいる机に立ち止まる

あぁ、心臓が本当にうるさい
聞こえちゃうんじゃないかって思うくらいバクバク音をたてた



「あのっ!」



不自然な止めかたをしたと自分でも思う

三人がゆっくり振り替える
そのとき名前ちゃんと目があって顔が熱くなった


逃げ出したい。




「あのさ、よかったらこれ使って?」




震える手で差し出した割りばしを名前ちゃんは俺と見比べた

そんな顔で見るなと叫びたくなる
でもいま不審な行動したらばれてしまう


彼女は驚いていたけどふっと笑った




「ありがとう。平くん」




彼女からでてきたのは俺の名前だった


知っていてくれた俺の名前
嬉しくて、嬉しくて俺はえ?ともう一度聞き返した

単純に考えれば同じクラスなんだからわかるだろと思うのだがそんな単純なことでさえ俺には考えられないほど混乱した



「平くんでしょ?

だってよく学校でみるもん!
教室でも廊下でも裏庭でも屋上でも下駄箱でもいっぱい見かけるのに話したことなかったから嬉しい、ありがとう」




気づいてくれてたんだ


何度も何度も彼女を見てたけど目があったことは一度もなかったから知らないものだと思ってた


高嶺の花

彼女には本当にぴったりな言葉だと思うよ




柔らかい笑顔浮かべて鈴みたいな声でありがとう

だなんて言われて平気でいれる奴はいないと思うんだ



俺もそのひとりなんだ
もう彼女の虜




「あ?誰だテメェ」


「あれ、平くんだ」




戻ってきた桜井兄弟が俺を囲む

はやく戻れば良かったと後悔したがもう遅い
幸せだった。平凡な人生に最後素敵な思い出をつくれたんだから…と涙目な俺に天使の救い。



「コウ、ルカだめだよ
平くんはわたしにお箸くれたの

平くんになにかしたらもうお昼ご飯あげないよ?」




手なずけるような言葉にクラスのやつらも俺も固まった




「…それはだめだ」


「オマエ、アイツに箸くれたのか
イイ奴じゃねぇかタイラだっけか?
ありがとよ」



離すどころかお礼まで言われるとは思わなくて彼女の存在を身に染みた


ごめんね?と口パクする彼女
傍にいる友達は流石バンビと口を合わせる



一息ついて俺は自分の席へと戻った







               主人公と通行人が出会ったワケ
           ((  いつかあの候補に俺も入れたら  ))

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ