短編

□さぎそう
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ときどき思うんだ

教会で思いを告げれば良かったと
まさかこんなに会わなくなるとは俺も思わなかったんだ

だって恋人みたいに高校生活は一緒にずっといて
休みの日もこんな毎週遊ぶくらい仲がよかった


この関係に満足していたんだ、あの頃は
あの関係が心地よかった


まさか、俺も会えなくなる日がくることを予想してなかった



後悔だけが虚しく残る。


家族ではしゃぐショッピングセンター
恋人と寄り添う公園

俺の傷を広げるには十分だった




ある日の夕方、俺は久々に会えるコウに胸を膨らませながらスーパーへと立ち寄った


なぁ、何年ぶりだ?
コウは卒業してすぐ実家ついで毎日頑張ってる

俺は大学いきたいからって断ったんだけど、コウは親不孝な俺にかわってめちゃくちゃ頑張ってるらしい




「…ホットケーキかな?」




コウが嫌な顔するところみたい、凄くみたい

わくわくしてかごにいれた

あいつもくれば…、でもいまさらだよな
複雑な気持ちが何度も交差する


あぁ、なんてキモチワルイ。




「あれ、ルカ?」




あのときと変わらない、鈴の音色みたいに綺麗な声がすっと俺の耳に入った


ゆっくりと前をみると携帯の表示の人物
会いたかった、あのときの大切なひとだった




「ホットケーキ買いに来たの
ルカ変わらないからわかっちゃった」



「…名前」




いいたい言葉は全部うまく言葉にすることが出来なくて喉につっかかる

会いたかった

好きだ

なぁ、あのときみたいに戻れないかな?


言おうと決心したとき左薬指に輝くモノを見つけた




「…結婚したんだ」




でかかってた言葉全部、空気になって消えていった




「そう、仕事先の先輩とね?
いまは子供もいるんだよ?
保育園にいってていないけど」




過去の大切なひとには子供も旦那さんもいて、置き去りにされた子供みたいな虚しいキモチに息苦しくなった

なにをしても残るのは後悔のみ。
俺の夢描いたこの恋は全部奪われた




「…おめでとう
呼んでくれれば良かったのに」




嘘だよ、呼ばれたら俺そのひとのこときっと殺しちゃう気がするんだ
俺が奪うはずだったもの全部奪ってったから

ただの八つ当たりにすぎないこの気持ちをぶつける場所がない




「わたしだって、きが引けるのよ

あのときルカのこと好きだったし」






教会で伝えるはずだった気持ちは伝えたほうが正解だった


彼女も俺を思ってくれていた

サクラソウはずっと導いてくれてたんだ


じゃあ、またね?と彼女は手を振ってどこかへと消えてしまった

出会えた喜びと虚しさが身体を支配する



名前のヒーローは俺だけだ

そう約束したじゃねぇか



いつまでもカッコつけてろ

コウはいつだって忠告してくれてたじゃねぇか



余裕ばっかりしてた俺の完敗だった

呆れて泣くこともできなくて、瓶とスーパーの近くにあった花屋さんに寄ってさぎそうを手に取った








           さぎそう

         ((  花言葉は夢でもあなたを想う  ))

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